京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

いい仕事をしたな

2022年09月13日 | こんな本も読んでみた
酒井忠康氏が愛読書の一冊としていることを著書の中で書いておられた『アイヌの碑』(萱野茂)。先日たまたま中古書店で見つけた。


【作り話ではない。自らの生い立ちから、祖父母、父母、死んだ兄弟の生涯の真実。そして、アイヌ民族が背負わされてきた苦難の道。
5年の歳月を費やした、「文字をもたなかったアイヌ民族の一人の男が日本語で書いたアイヌの碑といえる」】本(1980年出版)。

「萱野さん、聞いてくれ。土を掘れば、石器も土器も出てくるが、言葉、おれたちの祖先の言葉は出て来ないもんなあー。言葉は土に埋まっていない。木の枝に引っ掛かっているわけでもない。
口から口、ただそれだけよ。頼むから若い人にアイヌ語を教えてやってくれ」
と一老人の言葉があったそうだ。

「言葉は民族の象徴、魂です。伝え続ける限り輝き続けます。今の子供が大人になったとき、
『おれは萱野茂からアイヌ語を学んだ』と胸を張ってくれたら、いい仕事をしたな、と嬉しくなります」
と萱野さんは書いていた。

寺子屋エッセイサロンに参加する若い子たちがいる。楽しくも、より充実したひとときでありたい。自分にできることをもっと探して…、などとあらぬ方向で私の中にも思いがわいたのだった。



実が割れたばかりの種を湿ったティッシュで包んでビンに密閉しておくと、根が伸びてきた、と佐伯一麦さんのエッセイにあった。
鉢に植えて5年。30センチほど伸びた枝先に芽を付けたのは葉芽だった。さらに2年、50センチほどになって花を付けた。紅色の侘助だったそうだ。

気の長い話だと知りつつ真似て密封した。なんてことない椿。
コメント (3)
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