京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

人よりも空、語よりも黙。

2023年11月21日 | 日々の暮らしの中で
こんなに好天気の日は、〈人よりも空〉。
本山の報恩講にお参りしようかと思いもしたが上天気、人中に入るよりも空の下へと出ていきたい。



祠の一部分が、南天の木の幹が通る大きさでまるくくり抜かれていた。よく見ると、南天は右の花筒の脇から生えているのだった。真っすぐ伸びるよう住人が穴をあけ、幹を通したたのだろう。
たくさんの蕾が開くとき、この祠は南天の実と山茶花に荘厳される。

〈語よりも黙〉。


伊豆修善寺の温泉で療養中に大喀血し、死線をさまよった漱石。
この大患後、新聞連載された『思い出す事など』は、「漸くの事でまた病院まで帰って来た」の一文で始まる(のだそうな)。
死の淵から帰ってきて、「人間は閑適の境界に立たなくては不幸だと思う」という心境に達する。

細川護熙氏は、病気が漱石に「閑」を意識させたことがひときわ興味深いと『不東庵日常』で書いておられた。
「人よりも空、語よりも黙。」は漱石の日記にある文言だと教わった。

私は特に深い思いもないまま都合のよいいただき方をしているが、少し気持ちが疲れたなと思うときなどは「閑」の境遇を求めて人から離れ、自然の中に身を置くことが安らぎになる。胸が大きく開くような感じで解放感を味わう。歩いて、疲れて、ぐっすり眠れれば、気力も回復する。このところよく眠れない日々でもあった。

孫娘は明日の朝の便で日本にやって来る。2020年3月19日、コロナ禍でバタバタと父親の待つオーストラリアへ一人で帰国するのを、彼女の弟たちと家で見送って以来だから、かれこれ3年8カ月。無事な到着を祈り、私たちも再会を心待ちにしている。
コメント (2)
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