「明け方のサンタさん」
いつものように新聞をとりに行く。朝のひんやりした、すんだ空気にふれて目が覚める。季節をはだで感じながら、きれいに折りたたまれた新聞を開くと私の一日が始まる。今日はどんな記事があるだろう。
師走、早朝の寒さにおどろいた。周りはまだ真っ暗。冷えきっている新聞を手に考える。配達員さんはもっと早い時間から届けてくれているんだな。今よりもっと寒いんだろうな。
そこで、日ごろの感謝の気持ちをこめて、おこづかいでカイロを贈ることにした。配達の邪魔にならないよう、手首にまくタイプ。メッセージも添えて新聞受けにかけておく。プレゼントに気がづいてくれるかな。
いつも新聞を届けてくれてありがとう。毎朝わくわくを届けてくれるサンタさんのような配達員さんへ。届けてくれるその手が、少しでも温まりますように。今日だけは私もサンタさん。
明日はこの冬初めての雪が降るらしい。
メリークリスマス。
新聞配達に関するエッセーコンテストで、小学生部門・最優秀賞に選ばれた、になさん(9歳 北九州市)による作品で、切り抜いて後も私は何度も読み返している。
今日、立ち寄った書店の店内放送でブックサンタへの参加を呼びかけていたので、(ああ、そういえばそんな時期だった)と思い出すことになった。
習慣としての読書が最も必要なのは子供だという。
「なあ、透。本を読むということは他人の人生を生きるということだ。自分ではない誰かの人生を辿り、その心で生きてみるということだ。それはなんと素敵なことだとおじいちゃんは思うんだ。魔法みたいなことだなあとね。ひとは、一冊の本を読むごとに、きっと、その本のぶんだけ、優しくなれるんだとおじいちゃんは信じてる。本がなければ、ひとりぶんの人生しか生きられず、自分の目だけでしか、世界をとらえることができない。けれど、一冊の本があれば、違う世界を見る眼差しを、違う人生を生きる魂を得ることができる」(『桜風堂夢ものがたり』村山早紀)
本は読んだ人の心を温め、“人の中で眠るうちに育ち”、そして滋養となっていく。
ー 子供のために大人が手をとり合える社会でありたい。
楽しみごとをいっぱい詰めた大きな袋を抱えて、いよいよ明日、我が家にもサンタさんがやって来る。