京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

京に燃えたおんな

2024年03月22日 | こんなところ訪ねて
昼から河原町通りにある書店MARUZENに出向いた。用を済ませて店内を見歩いていて、澤田瞳子さんの『のち更に咲く』という単行本が出ているのに気づいた。最新作のようだ。
古代、中古が時代背景の作品が好きなものだから大ファンなのだけれど、この頃は澤田作品が遠のいていた。

帯には【時代に抗う 和泉式部  すべて見通す 紫式部】とかあった。
今の時流に乗らんとするかのような?『のち更に…』、などと言っては失礼だけど、それでもなにかかるそう~って感じ。

今年はNHK大河ドラマの影響か、2008(平成20)年の「源氏物語千年紀」の賑わい再来かと思える催しが各所で見られる。
源氏物語成立千年となるのを記念した行事ごとだった。「古典の日」が制定されたのもその延長。寂聴さんが演壇にあがられていたのを思い出す。


昨日は和泉式部忌だったのを思いだし、和泉式部の寺とも親しまれる誠心院に行ってみることにした。書店からは近い新京極の通りに面して、門を構えている。

 

藤原彰子(道長の娘・一条天皇の中宮)に仕えた式部のために、道長が小御堂(こごどう)を与え、晩年、式部はそこに住んだとされる。そのお堂を、この地に移建した。

 

   春はただわが宿にのみ梅咲かば
       かれにし人も見にときなまし

ゆかりの梅の木は本堂前に。そして、墓とされる宝筐塔がある、

 

〈愛の遍歴を知った深い悲しみ〉
〈大胆に愛うたう情熱歌人〉
〈燃えた恋はただ二人〉
〈恋人との逢瀬描く〉 
『京に燃えたおんな』の和泉式部にはこんな表現が散見する。

【式部に噂の男は多かった。子供を産んだとなれば、うるさい詮索。面と向かってぶしつけに「どなたを親に決めましたの」と問う。プライバシーの侵害に憤然とした彼女は、「そんなに知りたければ、あなたがお死にになってから閻魔さまにでもお聞きなさい」と歌を詠んで手厳しく反撃した】
「現代女性のさきがけのような心意気を示した女性」と紹介している。

でもね、物語風の『和泉式部日記』を読むと、また違う彼女の姿が透けてくる。心には表裏があるもの。

式部が貴船神社に参詣した折に詠んだ歌が残されている。
     
     もの思へば沢の蛍もわが身より
          あくがれ出づる魂かとぞ見る



昨年11月末に孫娘と見た蛍岩。貴船は見事な紅葉だった。

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ものすごいエネルギーで | トップ | 伝道師 »

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
若かりし頃 Reiさん (kei)
2024-03-24 11:37:06
ずっと澤田ふじ子さんの作品は読んだことがなかったのですが、昨年の秋ごろ、『閻魔王牒状』を読みました。
Reiさんがたくさん読まれているのは知りながら…。
先日本法寺でボランティア氏が面白かったと言われていた『闇の絵巻』、ネットで取り寄せることにしました。

岩波の古典文学大系を使っていたのですが、岩波の文庫本を買って巻ごとに切り取り、
カバーをつけて通学の車内で読んだものです。そんな若い時代がありました。
名訳と言われる作品でも、今はもう読み直す気力も関心も低下です。

今年は「大河」を見ています。
時代考証が倉本一宏氏なので、ちょっとだけ興味を持っています。
返信する
澤田瞳子さん (Rei)
2024-03-23 22:07:21
母上のふじ子さんの遺伝子を継いでおられるのでしょうか?
「花僧」「流離の海」など強く記憶に残っています。
反して大河ドラマも見ていますが、
相関図など私にはわかりにくくて・・・
美しい色彩の衣装には目を奪われますが、
この時代は不得手です
Keiさんのおかげで江戸時代の激しい絵師の世界を
ほんの少し知りえました。感謝です。
うんと若いころ谷崎源氏を読みましたのに。
なにの役にもたっていません。
いまも本棚のどこかにあるはずです
返信する
歴史を紐解く サッチーさん (kei)
2024-03-23 20:49:14
こんばんは。
京を舞台にたくさんのドラマがあり、人生が展開されていますよね。
訪れる先々に歴史があることに気づかされますが、
それは京都に限らず、
土地土地にはさまざまに歴史があって、風土があり、風土が育てた人間がいて…、
などと思いますと、やはり歴史を知れば退屈などしてられませんね?(笑)

物語と史実、知らないことは読後に回して楽しんでいます。
返信する
京に燃えた女性 (サッ チー)
2024-03-23 17:27:35
京都には多くの男性も女性も、燃えていますね。
歴史を紐解くと、刺激を受けることばかりですが、
京都にお住まいだと、その歴史が身近に自分の身にも
置き換える事が出来そうな気がします。
何処を歩いてもずっしりと歴史の重みが身に染みますね。多くの物語り、小説などは素晴らしいお手本でもあります。
心躍りながら多くの小説を読まれているkei様。
益々、知識が増えて心も豊かになります。
返信する
まるく収まって  ゆりさん (kei)
2024-03-23 14:40:27
置かれた立場や状況や、ふととしたタイミングで、だれしも「私」が出ますしね。
異なる性格や考えを持った人間同士ですから、
心を結ぶまでには時間がかかることだってありまますよね。

学生時代の研究会の旅行で鞍馬から木の根道を貴船におりました。
このとき以来で、孫娘と半日を過ごしました。
朝からずっと雨です。
返信する
もう一度(笑) (うばゆり3)
2024-03-23 10:58:25
こんにちは。

今日もまた雪降りです。

上で変な話を書きましたが、小姑の名誉にかけて追記です(笑) 
色んな行事ごとに、兄嫁とはいっても年下の私が褒められるので、
夫のいうのには○○は、お前に嫉妬したんだろうとのこと(笑)

でも、今では実家を守る私の身体を案じる人になってますので感謝感謝です。
口だけではいけないので、近日中に故郷の味を送ります(*^^*)

貴船あたりは行ってみたいところです。
実家に貴船菊が沢山ありましたので、子供のころから惹かれてた地なのです。
さて、家事に舞い戻ります(^^♪
ではではまた♪
返信する
史料からも楽しみが ゆりさん (kei)
2024-03-23 08:51:44
おはようございます。
「和泉式部日記」はもう紙も変色した学生時代に読んだ文庫本が残っています。
『小右記』『御堂関白記』を読まれてるのですね。
「など」とありますから、そのほかにも。
ゆりさんの学ぼうとされる意欲に敬服します。
いいなあ、と思います(笑) よし、私も~なんて思えてきますから嬉しい。

第4皇子の前には兄の第3皇子とですね。
あれこれ周囲が言うのは今も昔も変わりませんね(笑)
土蔵にそっと手紙を隠し置く?だなんて(笑)
突然の話題にちょっとクスッとしてしまいました。
手紙の内容の真実だって、周辺から攻めませんと真実には近づかないということでしょう。
本人さんの思いは別としましても。だから気にしない気にしない。
女同士ってのは、いろいろありますよね。

大河ドラマから史料に目を向けて積み上げていかれるゆりさんに学ぶと致します。
返信する
『和泉式部日記』 (うばゆり3)
2024-03-22 22:49:57
こんばんは。

この本を読もうと思っていたところです。今は『小右記』『御堂関白記』等読み始めてます。

和泉式部は冷泉天皇の第4皇子の敦道親王と交流があったようですね。

>また違う彼女の姿が透けてくる。

そうでしょうね。
人の心にせよ歴史にせよ、いろんな方面から観ないと真実には近づかないと思います。

ところで、私のことを悪く書いた小姑の手紙が土蔵の中に入ってます(笑)
何百年後かに、その手紙を見た人は私のことを誤解するでしょう(笑)
ですので、残された史料というものの怖さも、また思いますけどね。

ですが、私は歴史は深く学んでません。他のこともですが。
返信する

コメントを投稿

こんなところ訪ねて」カテゴリの最新記事