京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

本の神様

2022年08月04日 | 日々の暮らしの中で
本の表紙と本文の間にある見返しという場所に、鬼の姿を描いた朱印が押されていることがあって、魁星印と言い、本の神様とも呼ばれているそうです。

天保11(1840)年の随筆集『三養雑記』に描かれた魁星(京都府立京都学・歴彩館蔵)

一般的には鬼の姿をして斗(ます)を蹴り上げていて、筆を持ち、足元に大亀、頭上に3つの星で表されるそうですが、この絵のように足元が亀でなく雲であったり、頭上の星の数が6つ、などと幾つかパターンがあるようです。
中国の官僚や文人から学問の神様としてあがめられ、それが出版業から書画商へと広がって、本に住み着くようになった、と。もっとも、江戸時代の本です。

漁師から船乗りになり、虫けらのように怒鳴られ追い回される苦役の日々。「おれは何をするために生まれてきたのだ」。何のために。どんな意味が。
耐え、経験を積んで、北前船の帆の改良で、江戸の海運を変革した海商・松右衛門の苦労、喜び、成長。千鳥、小浪の人生模様。『帆神 北前船を馳せた男 工楽松右衛門』(玉岡かおる)をひたすら、じっくり読んでいる。。


海上を行き交う多くの白帆。「風をつかみ光をはらんで満帆に膨らむ大いなる船」。
彼は後年、白帆の全てを画期的な発明で作り替え、♪金比羅 船々 追風に帆かけてシュラシュシュシュ― の風景を打ち立てることにもなった男、と早くに明かされた。
姿の見えない本の神様が誘い込むのか。自らが引き込んでか。わくわくドキドキ。

心に住み着いたごんママ(『大事なことは小声でささやく』)の声が聞こえてくる。
「何か一つ夢を持ちなさい。夢は必ず叶えなさい」
「夢をかなえるとね、アラ不思議、あなたの過去が変わるのよ。ああ、私のこれまでの人生は、今日この日のためにあったんだって。辛かった過去がキラキラした大切な思い出に変わるのよ」

過去にとらわれないで、大切な「今」をつまらなくしないで、いまこの瞬間だけをしっかり味わって生きなさい。ねっ、松どん。

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