『湖の伝説 -画家・三橋節子の愛と死-』(梅原猛著)という本があります。夫との婚約時に郵送で届いた一冊でした。40年にもなろうかという昔のことで、当時読了したかさえ記憶にありません。以後、何度かはページを開き、昨年には改めて再読したという一冊ではあります。
誰にも引けを取らない美術館オンチ。そうなんですけれど、どんなスイッチが入ったのか。滋賀県大津市小関町にある三橋節子美術館を訪ねました。2回目ですが、今回は近松寺(湖西27名刹の5番)とセットで。
昭和14年3月3日、大阪で誕生。京都市立美術大学で学び、昭和43年、日本画家・鈴木靖将氏との結婚を機に滋賀県大津市の長等山の麓に居を構え、長等の風土や歴史を題材に数多く作品を発表された節子さん。二人の子供を授かります。昭和48年、鎖骨骨肉腫により右腕切断の大手術。術後すぐから、絵筆を左手に持ち替えて描くことに専念されたと。
退院してみると自宅の裏山の近松寺(ごんしょうじ)にある樹齢800年の菩提樹がスズランのような花を咲かせていたそうです。初めて左手で本格的に描かれた作品「菩提樹」。先が短いことを知って、夫や子供たち、父や母に別れを告げるために、近江の昔話に自分の思いを重ねて絵を残します。家族で余呉湖に遊び、互いに別れを受け入れ、さよならを言う時間を過ごし、そして描かれた絶筆が「余呉の天女」。我が子への遺言、「雷の落ちない村」。大切な人を失う悲しみ…。その中にも、亡くなった人こそいつまでも心の内に存在し、傍にいてくれると実感するのではないでしょうか。作品に用いられる白い線が、それと、使われる朱色がとても印象的に心に残ります。
靖将氏がスケッチしたデスマスク。亡くなる7時間前に二人の子供に当てて書いたという葉書2枚の展示も。地域の豊かな先人のゆかりを大切に継承されていることが学芸員さんや館内の雰囲気から伝わって、とても素敵な美術館です。
再婚された靖将さん。氏は新見南吉生誕100年を記念した企画で童話の挿絵を担当されていて、その挿絵原画展が新見南吉美術館で開催中だと教えられました。
美術館の裏からさらに少しだけ高みに、雨風に傷んではいましたが琵琶湖に開いて近松寺の本堂はありました。近松門左衛門が20歳から3年ほどをここで過ごしたと伝えられます。
そこかしこに眺められる寺の甍に目を奪われながら、ぶ~らぶ~らと京津線「上栄駅」まで戻りました。
「日本文化に多く見られる入れ子型構造の屋根の先端の反りは、上昇を志向するもんじゃなくて、内へ引き寄せながら外を包み込んでいる力だそうだ。…」。 ???同行者の言葉は宿題になりました。
三橋節子さん、大好きです。
絵は観るたびに切なくなります。でも、洗われるような悲しさですが。
「湖の伝説」も忘れられない一冊です。
「花折峠」も。
三橋節子さんのこと私は初めて知りました。
美術はオンチですが、日本の作品は分からないなりに好きです。
旦那様が くださったのですね、郵送で。
私も思い出しました。本とレコードもらいましたゎ
京都は色んな所にアクセスできて好いです〜
味わい深いお出かけの様子がステキでした(*^^*)
死を覚悟する中で母の愛をこめて創作された作品、やはり観ていても心が揺すぶられます。
靖将氏が新見南吉童話の挿絵を担当されたり、今回の企画展を記念して「南吉の宙」を制作されたということ、
いのちへの思いといいますか…、すべてはつながっているのでしょうか。
『湖の伝説』、読んでおいででしたこと、なにやら嬉しいです。
今回は「三井の晩鐘」が期間を限っての展示作品として含まれていました。
当初は「どうして今、こんなオモイ本を?」と思ったものです。
菩提樹の木は台風の被害に遭ったそうですが、新しい世代の苗木が数本、美術館の隅で育っていました。
近松寺への登り口まで案内してくださり、好感度大の美術館であり学芸員さんです~(笑)
一字違いの三橋節子さんは初めて聞くお名前です。
早く亡くなられたのですね。
反対に三岸さんのほうはかなりの長命でした。
『湖の伝説 -画家・三橋節子の愛と死-』>
keiさんには思い出のご本ですね。
琵琶湖畔近松寺を訪れたりとよい一日になりましたね。
靖将氏、挿絵担当されて、ここで新美南吉記念館~半田の登場になるわけですね。
ずいぶんな時間がかかっていますが、この本によって広がった世界です。
今回は靖将氏の企画展の案内をしていただけて、
新見南吉の生い立ちなども冊子を通じて深く読ませていただきました。
もう少し近かったら記念館にも行ってみたいです。
「半田市」であることは、これまでReiさんが何度かご紹介くださってる中からすぐに思い出しました。
好い学芸員さんと出会えて よかったですね。
うちは婚約中なのに子育ての本をくれました 笑
年賀状も書きます、ご心配なく♪
ありがとうございます。
ほほえましくっていいですね(今思えばでしょうか)
でも未来志向で楽しい家庭を夢見てちょっと先取り。これはいいですね!
ちょっと、いえ、少し多めに笑わせていただきました。
やはり、時期を考えればユニークなおくりものですよね(笑(笑))
うちは反対に? なんかいつもようわからんのですわ~。
ありがとうございます。
初めて知りました。
最近は美術館に足が向いてなくて
つい10日くらいまえには友人の個展を
みましたが、絵画を見る目がないのか良さが分らなくて、友人に批評も出来ませんでした。
我ながら情けないことでした。
さて、ブログに作品を掲載するにあたり、一度は
コメント欄を閉じたのですよ。
私としても酷評を書かれたりするとめげるタイプ
なのです。でもいつも交流がある方々との
お話も楽しくてやはりまたオープンしました。
ブログに行き悩んで止めようか〜とか試行錯誤
でしたが、やっと承認制コメントにして
好きなことを書くブログにしました。
俳句も小説も書くことで自分にプレッシャーを
かけてお尻を叩いております。
どうか、スルーされてくださいませ。大丈夫です。
ありがとうございました。
本との縁がなかったら三橋節子さんのことは知らずに終わったかもしれません。
そう思えば、当初はなんで!?と思った一冊でしたが、ありがたいことでしたんですよね。
絵を見ても好きか嫌いかでの感想程度しか言えませんで、どうしても絵画鑑賞には足が遠のきます。
実績もおありのryoさんですのに、無難な感想では失礼だと思う気持ちも強く、
ですがネット上のこと、真剣に書いては重いとためらいもありました(笑)
これも性格なんでしょうか、ややこしいですね。
一歩一歩進まれることに刺激されます。