京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

「ピョンピョンはねろ」

2017年11月16日 | こんな本も読んでみた
時間の隙間をとらえては、よしっ、行こうって調子で起こす行動が私にはよくある。多分に衝動的な部分があっても、そうやってただただ興味のむくまま「少しづつ」の時間を積み重ねてきた。昨日15日もそうだった。


しばらくかけて読んでいた『死してなお踊れ 一遍上人伝』を読み終えたことでもあり、東山にある長楽寺で開催中の「遊行上人とその秘宝展」(10/20から11/30まで)を拝見しておこうと足を運んだ。

          

自分で考え抜き、独自の言葉で表現する書き手に贈られるという池田晶子記念賞を受賞した政治学者・栗原康氏の著書。ことばが踊っている。こんな文体、文章の作品をかつて読んだことがない。しょっぱなから度肝を抜かれたが、寂聴さんは「新鮮な文体」だと評される。
「一遍が狂ったようにおどりはじめた。はげしく肩をゆすり、あたまをブンブンふって、手をひらひらと宙に舞わせている。そして、おもいきり地をけりとばし、全力でとびはねている。ピョンピョンピョンピョンとびはねて、ピョンピョンピョンピョン、またはねる。しかも、それでもまだものたりないと、クルッとまわってまたはねる、クルッとまわってまたはねる。」「むちゃくちゃきもちよさそうに、満面の笑みをうかべてピョンピョンピョンピョンとびはねる。」

              パンフレットより

鎌倉時代に、諸国遊行の途につき、津々浦々を巡り貴賤を問わず念仏の札を配り、行くところで民衆に念仏踊りをすすめた一遍上人。「遊行賦札踊躍念佛(おたびふだくばりおどりねんぶつ)」と言い、配られた小紙片には「南無阿弥陀仏 六十万人 決定往生」と記され、歴代の遊行上人に継承された。(時宗の法燈を継いだ時宗の法主のことを「遊行上人」と称す。)
――ことなどが説明されていた。一遍上人をはじめ7人の遊行上人の像が並ぶ。また、上人が代々踏襲して身にまとう「阿弥衣(あみえ)」と呼ばれる衣は、時宗独特の衣で、縄文時代から作られていた手編みの布で作られているのだとかで、現存する本物をみた。

跳ねて跳ねて、捨てきったと思った執着心。けれどそれもいっとき。ただ日頃のストレスを発散するだけで、また翌日から同じ日常を始めることに無意味さを思い始める一遍には、人間の変わらない姿も浮かぶ。自由奔放。善意を装って生まれる正しさの強制、秩序を嫌う。捨てろ捨てろ。心やしがらみ、一切のこだわりを「捨てろ」と歌う。「真の仲間」をもって、「群れるな」「バラバラに生きろ」。「仲良しクラブのつきあいなんてまっぴらだ」。「死んだつもりで生きてみやがれ」。次から次と一遍の、著者の、ことばを浴びる。

最近、孫娘が私に、中学生だった頃の話を聞きたがる。〈人はそれぞれ。仲間を見つけ、それぞれに思う道を、それぞれの自分で生きたらいいんだ。いろんな人と出会うたびに、あたらしい自分に出会っていくんだよ 〉、と受け取ったメッセージを話してあげようか。わかるかしら…。〈人間は本来なんにでもなれる。無限の可能性に開かれているんだよ〉、とも。

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6 コメント

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群れるな☆ (Rira)
2017-11-16 22:06:29
keiさんの運転は、ご主人の信頼を得てるのですね♪私は遠出禁止です。
時間の隙間をとらえての行動力、とってもカッコイイです(^^)耳学だけじゃなく五感を使って得る知識は好いですね。
こだわりを捨て、真の仲間を持って群れるな。。勇気が湧いてきますゎ

Jessicaちゃんが 聞きたがるんですね、いいなぁ♡メッセージわかると思います。今から花開くんだから好い言葉です。私もメモメモ (*^^*)
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ひたひたと歩みつづけ・・・ (ゴマメのばーば)
2017-11-17 10:20:34
こんにちは。
一遍上人さま、大好きです。
古い刊(1977年)ですが、栗田 勇著『一遍上人 ――旅の思索者―― 』を読み終えた時、心がふるえたことを覚えております。
〈・・・・・私たちの心のなかを、ひたひたと歩みつづけ、立ち去ってゆく者たちの姿・・・・・〉
今でも、私の中に息づいております。
そうです。「心のなかを」です。
何か、嬉しい記事でした。
ありがとうございます。
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Unknown (会津マッチャン)
2017-11-17 14:37:37
いつも貴女のすごい行動力に感服しています。
行くところはいつも里山くらいです。
迎える雪の季節に学ぶところ、行くところを探したいと思います。
残り少ないながら、開かれた無限の可能性を描きながら。
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群れるな…、Riraさん (kei)
2017-11-17 18:10:54
こんばんは。
京都市内、特に中心部は車より公共機関の利用が便利です。
思い立ったときは近場が多いですし、目的を果たして、とんぼ返りも多いのです。
〈妻や子、「家族」のこだわりも捨てる、そうすればみ~んな一緒〉、うーん、そうか…、でした(笑)
来年から中学生です。希望と同時に不安もあるでしょうね。
いろいろな可能性にチャレンジしてほしいです。
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「心の中を」…、ゴマメのばーばさん (kei)
2017-11-17 20:32:54
こんばんは。
空也、一遍、踊念仏…などとだけで、栗田氏の著書についても知らずにおりました。
「先人の言葉や生きざまに肉薄し、一心同体となって言葉を紡ぐ姿勢が評価されての受賞」、と記事で読みました。
ほんとうにユニークな表現スタイルでの評伝でした。
「無念」、なかなか容易ではありません。
ありがとうございました。

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無限の可能性、会津マッチャンさん (kei)
2017-11-17 20:51:55
こんばんは。
初雪が降ったのですね。
里山を巡ってのマッチャンさんのライフワーク、これからしばらくは現地での活動が小休止となりますね。
「将来開くべき心の花のために…」、こんな言葉がありました。
次代を担う子供さんたちのためにも、エネルギーを蓄えて春を待つ、というところですね。
機を逃さず動けていることを感謝しなくてはいけませんね。
くれぐれもお身体大事にお過ごしください。
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