京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

「他界への通路」

2018年07月23日 | 日々の暮らしの中で

   念力のゆるめば死ぬる大暑かな  村上鬼城

「逃げ場なきこと空気にも」と詠まれた油照り。京都はこの先いよいよ本格的な油照りの夏を迎える。

ガクから突き出すように奇妙な花の付き方をしているクサギの花。その花の中からやたら長く伸びたシベの異様さ。
シベをたどって奥へ、奥へと入り込む、という逃げ場はあるのか…。
前登志夫は「花は他界への通路」と口にされていたのだろう。大阪在住の歌人による師への挽歌を詠んだことがある。
「花はみな他界への通路と言ひましし師の肉声をとはに失ふ」

朝顔の花が咲かない今年、どことなく物足りずに寂しい夏だ。
やわらかく青い花びらを広げた最初の一輪。その真っ白な花芯の奥から、亡き弟が「ねえさん!」と呼びかけてくれそうだったのを思い出す。



コメント (4)
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