念力のゆるめば死ぬる大暑かな 村上鬼城
「逃げ場なきこと空気にも」と詠まれた油照り。京都はこの先いよいよ本格的な油照りの夏を迎える。
ガクから突き出すように奇妙な花の付き方をしているクサギの花。その花の中からやたら長く伸びたシベの異様さ。
シベをたどって奥へ、奥へと入り込む、という逃げ場はあるのか…。
前登志夫は「花は他界への通路」と口にされていたのだろう。大阪在住の歌人による師への挽歌を詠んだことがある。
「花はみな他界への通路と言ひましし師の肉声をとはに失ふ」
朝顔の花が咲かない今年、どことなく物足りずに寂しい夏だ。
やわらかく青い花びらを広げた最初の一輪。その真っ白な花芯の奥から、亡き弟が「ねえさん!」と呼びかけてくれそうだったのを思い出す。