雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ルールの限界 ・ 小さな小さな物語 ( 1214 )

2019-12-08 15:28:48 | 小さな小さな物語 第二十一部

「ルール」には振れ幅があり、限界もあることは承知の上ですが、このところ、それを痛切に感じさせられることが数多く見せつけられます。
「ルール」と言う言葉は、もちろん外国からやって来た言葉ですが、いわゆる外来語と言うレベルはとっくに超えていて、立派な日本語ではないかと思うのですが、さて、その意味はということになると、なかなか一筋縄ではいかない言葉のように思われます。
手元の辞書で調べてみますと、『「ルール」とは、「規則。通則。準則。例規。』と説明されています。どうも、日ごろ気楽に使っているのとは、少し違う風合いを感じてしまいます。個人的な感覚でしょうが。

説明されている四つの言葉には、いずれも「規」か「則」が含まれています。そこで、少々乱暴ですが、これらの言葉の代表として「規則」を辞書で調べてみました。『 ①きまり。のり。おきて。さだめ。 ②物事の秩序。 ③事件または行為の一様性を表現し、または要求する命題。 ④人の行為や事務取扱いの標準となるもの。 ⑤[法] ㋐都道府県知事・市町村長がその権限に属する事務に関して制定する法規範。 ㋑最高裁判所が自己の権限によって訴訟手続、弁護士、裁判所内部の規律、司法事務の処理に関して制定する法。なお、国会の両議院、会計検査院、人事院、各種の委員会なども、その事務に関して同様に規則を制定する権限を持つ。』とあります。
私たちは、ごく気楽に「ルール」という言葉を使っていますが、何が何だか分からないほど複雑な面を持っているわけです。
もちろん、私たちがこの言葉を使う場合、この言葉が持つ意味の全てを指しているわけではなく、ごくごく一部を指して使うのがほとんどですが、受け取った方は、数多い意味の中のどの部分を意識しているのかによって、意思疎通は大きく変化するわけです。
「公正なルールに従い・・・」などと言っても、話し合いが難航することが多いのは、その辺りにも一因があるような気がするのです。

少々古い話になりますが、かつて、プロ野球の名審判が、「オレがルールブックだ」と大見得を切ったことがありました。
アウト・セーフに関して、これも名監督とされる人物の猛抗議に対して、大見得を切ったというものです。
スポーツという、最も「ルール」を大切にする場面であっても、その世界の歴史に名を残している審判と監督どうしであっても激しく対立するのですから、「ルール」に振れ幅や限界があることを認めざるを得ません。
なお、この話はすでに伝説化しているほど有名なものですが、これには後日談のようなものがあります。
一つ目は、監督の激しい抗議に対して審判は、「私が言っているのだから間違いない。ルールブックを見るまでもない」と言ったというものです。
もう一つは、「私がルールブックだ。それでいいじゃないか」と収束をはかったというものです。
さらに、「同時は、アウトかセーフか」と言う問題に対してその審判は、「野球に同時は存在しない、あるのはアウトかセーフだ」と言い放ったとされています。
この三つの後日談、ルールを考えるうえで、なかなか含蓄のある話だと思うのです。

わが国と隣国との関係が厳しさを増しています。
両国間には、二国間の約束事があり、多国間・あるいは国際的な約束事が存在しています。しかし、つくづく思うことは、ルールや約束事は、互いの信頼関係が保たれている時だけが、辛くも守られるものらしいことです。
せいぜい数百年程度の歴史を遡ってみても、国家間の条約や同盟関係などが、いとも簡単に破られてきたことは、限りなく存在しています。
表面化してしまった隣国との厳しい摩擦は、しばらくは覚悟しなくてはならないような気配です。やがては、私たちの日常生活にまで何らかの影響が出てくるかもしれません。
せめて、私たちの日常生活においては、近隣の人々とは、ルールの振れ幅を少し大きめに見て、しかも少し広いめの同時を設定すべきだと思うのですが・・・。

( 2019.07.11 ) 


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