先日、近所に住むかなりご高齢のご婦人がこられた。耳も遠いしほぼ認知症もある。普段からおとなしくあまり喋らない方ではあるが、前日まではいつもと変らぬ生活をしていたそうだ。デイケア施設で38℃あるのでお宅に帰されたそうである。家人があわてて車椅子で外来に連れてきた。ところが普段とまったく変わりがない。咳や鼻水があるわけでもない。咽頭は発赤もなく胸部の聴診でもcrackleなどは聴取しない。またSpO2も97%と正常である。つまりまったく発熱以外、所見がないのだ。通常なら「様子見ましょう」で帰宅させるのだが、いかんせん100歳近い高齢なのである。高齢になればなるほど重病でも症状や所見が出てこないことはよくある。念のため胸のX線をとったが、ガビーンと目が点になった。見事な肺炎である。まったく症状がなくてもこんなになってしまうのかとあらためて驚いた。すぐ入院設備のある病院に紹介してとりあえず胸をなでおろした。X線とらなければ手遅れになるところだった。