「・・・して、こうなのに・・・あの糞婆あが突っ込んできて・・・それにもかかわらず、こっちが悪いと言い出して・・・」というお約束の事故説明が長いのである。まずは患者さんの自己正当性の主張を聞いてあげなければならない。これは苦痛である。こちらとしてはどちらが良くても悪くてもそんなのどうでもいいのである。間違っても「ほぉ~それはひどいことされましたね」などと患者さんの肩を持ってはいけない。もし万が一、その事故の相手も受診したなら同じ自己正当性の主張を延々とするはずなので、こちらの矛盾した発言は自分の立場が危うくなる。あくまで医療側は中立を守るべきなのであるの。ところが患者さんは医者が自分の主張に同意してくれることを暗に期待しているようなのだ。だから事故の状況はなるべく聞きたくはないが、医者は事故状況から受傷形態や受傷程度を予測するので状況を聞かざるを得ない。苦痛なのである。