「粉薬が飲めないこと」を処方時に自己申告される患者さんはまだいいが、何も言わない人もいる。粉薬の処方をしたあとで患者さんが院外薬局で「カミングアウト」し、その院外薬局からクリニックに電話がかかってくることもある。「先生、患者さんは粉薬がだめとおっしゃっているのですがどうしましょうか?」 院外薬局の職員はどんな些細なことでも必ず連絡をしてくる。外来が立て込んでいるときはこの傍若無人な電話は極めて鬱陶しいのである。すべての順番を通り越して最初に返答しなければならないが処置中ではどうにも対応できない。しかし目の前で診療中の患者さんに待ってもらい、その電話の人のカルテを開き直し、そして変更薬を調べなおさなくてはならない。目の前の診療中の患者さんも自分の診療が妨げられていい気はしないであろう。でもこれは自分で「粉薬をのめないこと」を申告しなかった患者さんが悪いのではなく、今の時代ではこちらが最初から聞かなかったことがいけないのである。