六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

【不快感】雨の図書館と大馬鹿野郎!

2009-12-06 00:36:33 | よしなしごと
 冷たい冬の雨の中、県立図書館へ出かけた。
 返却と新たに借りたい本があったからだ。
 借りたのは、ジュリア・クリステヴァの、『ハンナ・アーレント』(作品社)とベルンハルト・シュリンクの『帰郷者』(新潮社)の二冊。

 
           雨に打たれてる図書館庭園のオブジェ

 前者は、年末の読書会の参考にとの思いだが、クリステヴァが、先輩のアーレントをどう受け止めているかに大いに興味がある。
 この書は、フランスで出版された「女性の天才」シリーズの第一巻なのだそうだが、これを書いているクリステヴァ自身が天才といっていい人である。

 
           図書館と道路を挟んでいる県美術館方面

 後者は『朗読者』(映画化された折の題名は『愛を読むひと』)や『ゼルブの欺瞞』などで著名なドイツの作家の割合最近のもの(おそらく邦訳では最新のもの)である。
 この人の邦訳のものは、ほとんど読んでいるので、躊躇することなく借りた。

 
            図書館庭園 浅い池の中のオブジェ

 実はもう一冊借りようとしたのだが、書架から出してペ-ジをめくって愕然とした。やたら傍線が引いてあるのだ。
 あまり人に悪態をついたことはないのだが、このときばかりは「この大馬鹿野郎が!」と思わず呟いた。

 そうした公共のものを毀損するという行為を平然と行う者がいること自体が驚きだが、それが公共性についての思考の書(この書の内容だ!)であってみれば、この大馬鹿野郎がどんな気持ちでこの書に触れたのかがまったく分からない。

 
           ロビーから図書館内部を 暖かそう
 
 そこへもってきて、傍線を付した場所が全くもってトンチンカンなのだ。それらはこの書の核心とはまったく関係のない、枝葉末節のようなくだらない箇所に付されているのだ。ようするに、なにも分かっていないことが一目瞭然なのだ。

 この人は、倫理的にも、論理的にも、まさしく大馬鹿野郎に違いない。
 こんな大馬鹿野郎が触れた本に、しかも見当外れの箇所に醜い傍線が引かれたものに、まともに向き合う気持ちがまったく失せてしまったので、この本は諦めることにした。

 
           図書館内 ガラスに描かれた作品
 
 ぐずぐずしていると大馬鹿野郎がうつりそうな気がしたので、寒々とした気持ちで図書館を後にした。
 雨は上がりはじめたが、不快感は私の中で澱のように留まったままであった。




コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする