先に、最近の新聞事情について書いた。本紙の記事も折り込みも少なくなって来ているということだった。
それを書いた翌日、新聞受けに二部の新聞が。一部はいつもの『朝日新聞』、そしてもう一部は『産経』。
産経なんてこの辺りでは見たこともない。もはや絶滅危惧種だと思っていた。しかし、既存の新聞店に寄生しながらほそぼそと生き延びているようだ。
今回の配達も、間違いではなくて宣伝活動の一環であろう。
で、当然のごとく読み比べてみることとなったのだが、まあその政治姿勢がかなり違うのだから端々に相違があるのは当然としても、ひとつの大きな差異は地域情報がまったくないということだ。
「朝日」の場合、名古屋本社の発行だから、全国共通記事の他に中部版、岐阜県版(愛知、三重などはその県の版)があって、いま地元で何が起きどうなっているのかがわかるのだが、「産経」にはそれらしき情報はまったくない。名古屋の「ナ」も岐阜の「ギ」も出てこない。
まあ発行は大阪本社のようだから無理はないが生活情報としては役に立たない。文化面もなんか薄っぺらな感じがする。
政治的なことには触れないといったが、ひとつだけ看過できない記事があった。それは、その前日、沖縄防衛局が辺野古の設計変更に関する膨大な書類を沖縄県に持ち込み、その承認を迫ったのだが、沖縄県はそれを拒否する構えだという記事で、これについては各紙もNHKも共通だ。
さらに、沖縄県がこのコロナ禍で忙しい折にと不快感を示したという報道もあり、これも「朝日」も「NHK」も同じなのだが、その解釈として産経は、コロナを政治的に利用して国防に関する重要事をないがしろにした沖縄県はけしからんと匂わせる極めて恣意的な記事をわざわざ別掲で載せている。
そして、産経が書いていなくて、朝日やNHKが述べているのが、この設計変更というのが、計画地域内にマヨネーズのような地盤が見つかったため、ほんとうなら22年に完工予定のそれが、10年ほど延び、3倍の予算に膨らむという負の側面についてだ。
これは昨秋、私自身が辺野古の現地へ行って聞いてきた情報と一致している。つまり辺野古の埋め立ては、当初、ろくすっぽ調査もせず、地元はおろか国民全体を騙し、強引に着工したのだが、マヨネーズのような地盤があり、結局は実際にはいつ終わるかわからない工事期間と三倍以上に増加する可能性の経費(全部税金だ!)を要する泥沼工事を強行しようとしているのが事実なのだ。
だから、この設計変更書自体が、詐欺師の後追い理由付けのようなものなのだ。そんな詐欺まがいの話への付き合いより、コロナ対策の方が遥かに重要なことは当たり前ではないか。
産経が完全に無視しているのは、沖縄県民が数度にわたって辺野古を拒否しているという事実だ。それを棚上げにしておいて、沖縄は基地よりコロナを重点にしているって当たり前のことではないか。基地を作らないということで選ばれた知事が、なぜこのコロナ禍の折に、詐欺まがいの膨大な書類に目を通さなければならないのか。
こんな時期に、それを沖縄県に突きつける沖縄防衛局のやり方こそ火事場泥棒というべきではないか。
産経がアサッテの方を向いたトンデモ新聞であることは改めてよくわかった。わざわざ投入してくれてありがとう。
どこかでこの悪弊を断つべきですが、このコロナ禍がその契機になるか、それとも、いっそうの統制強化に終わるのか、ひとつの正念場ではあるように思います。