北京オリンピックのことを忘れていてラーメン屋に入ったら、開会式を中継していた。あそこまで国力を見せつけようとされると、ビビりながら白けまくってしまう。演出は張芸謀(チャン・イーモウ)だそうだが、何でこんなもの引き受けたのだろう。中国映画の大物がハリウッド化する現象と同じか。テレビで、張芸謀の『単騎、千里を走る。』(2006年)を観ようとおもったが気が乗らずやめた。
かように苛々させられる政治の祭典オリンピックだが、競技自体はもちろん面白い。野球についてもいろいろと腹が立つこと満載なのだが、やはり応援する。初戦の対キューバは先発投手がダルビッシュ有(ファイターズ)か和田毅(ホークス)という予想のようなので、気になっていた、佐野真『和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか』(講談社現代新書、2005年)を古本屋で105円で買って読んだ。
これによると、和田の球が遅いのに打者が振り遅れてしまうのは、縦スピンの驚異的な回転数によるものだという。縦スピンによる揚力が重力とバランスする条件は、何でも「球速・時速150キロならスピン・毎秒50回転」なのだが、これは人間には無理で、平均的なプロ選手は30回転、松坂大輔は38回転。しかし初速と終速の差は平均10キロ、松坂が7、8キロに対して、和田は4、5キロだとする。したがって、和田が投げる球の縦スピンはもの凄いに違いないという理屈。
だいたいは推測で固められた論理なのだが、プロ野球は記録のスポーツであり、妄想のスポーツであり、神話のスポーツであるから、これでいいのだ。