TZADIKから、アンソニー・ブラクストン(サックス)、ミルフォード・グレイヴス(パーカッション)、ウィリアム・パーカー(ベース)による『Beyond Quantum』が出た。思わず叫んでしまったほどの、信じられないヘビー級の組み合わせだ。何を考えているのか。
仕掛け人は、ビル・ラズウェルのようだ。そのラズウェルが、デレク・ベイリー(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)と組んだ、アルカーナ『The Last Wave』(DIW)も文字通り衝撃的な組み合わせだったが(>> リンク)、このようなサプライズが好きなのだろうか。それともジョン・ゾーンのマニア性が動かしたものか。
非常に多作なブラクストンであるが、『アンソニー・ブラクストン・ディスコグラフィー』(イスクラ、創史社、1997年)をめくった限りでは、ウィリアム・パーカー、ミルフォード・グレイヴスのどちらとも共演した録音がなさそうだ。
帰り道に入手し、まだ1回聴いただけだが、それぞれの個性がそのまま出ているので、何だかデジャヴ感がある。グレイヴスの太鼓は、エド・ブラックウェルとはまた違うが祭祀的であり、鼓動のうねりが素晴らしい。その中を、どこを切っても同じような、微分的なブラクストンのソロが続く。どこを切っても同じとは、曲やフレーズのドラマ性を排除したものであり、比較できる音楽家をすぐに思いつかないという意味でも偉大だと言うことができる。また、微分的で、かつ見せかけの盛り上がりがないからといって、無機質でつまらないということにはならない―――むしろ印象は逆で、ブラクストンのソロはいつ聴いても賞賛にあたいする。
ブラクストン、とにかく来日してくれないだろうか。ヘンリー・スレッギル、ロスコー・ミッチェル、ノア・ハワード、ソニー・シモンズ、フランク・ロウ、挙げていけば切りがないが、演奏を目の当りにしたい音楽家のひとりだ。