スペイン国営セルバンテス文化センター東京で開催しているボリビア映画祭、今日は、ホルヘ・サンヒネス『第一の敵』(1974年)を観た。
ボリビア映画だが、ロケはペルーの農村でなされている。冒頭からマチュピチュの様子が映し出され、そこに腰をおろした老人が、画面に向かって、この素晴らしい石の建造物と精神文化は自壊しない、破壊したのは白人たちだと糾弾する。老人は、かつてのボリビア農村における革命ゲリラの様子を思い出し、語り始める。
これは明らかに、キューバ革命を成功させたチェ・ゲバラが、次に革命をこころざし失敗に終ったボリビアでの話をもとにしているようだ。ゲバラがボリビア政府軍とCIAに捕らえられ処刑されたのが1967年、そして映画は1974年だ。ゲリラたちは概ね好意的に描かれ、ゲバラに相当するようなカリスマは登場しない(もっとも、村人の治療をする医者はいる)。権力に抗する農民たちも同様に好意的な描写である。
映画を観ながら、農民たちの支持を規模として得ることができなかったゲバラたちに対する、その後の贖罪の気持が込められているのではないかと感じていた。語り部の老人は言う。農村にとどまっていたなら、革命組織は拡大していたかもしれない。密林に入ったのが間違いだったのだ。ボリビア政府軍と米国は卑劣な方法を用いてゲリラを追い詰めていったのだ、と。
回想は終わる。革命は成功しなかった。ヒロイックに滅びていく様子を描くような下品な真似は、ホルヘ・サンヒネスは好まないようだ。そして最後に、老人は、「第一の敵」は米国なのだと告発する。あまりにもソリッドな政治プロパガンダながら、それだけに、観るものを刺す。
●参考 チェ・ゲバラの命日
ついでに四谷から新宿御苑まで歩いて、模索舎で本を物色して帰ろうとおもったのだが、着いてみると9時に閉まっていた(10時までだと思い込んでいた)。エクササイズにしてはしょうもないので、歌舞伎町「ナルシス」でビールを一杯飲んだ。
「ナルシス」はありえないくらい混んでいたが、何でも先日亡くなった土本典昭さんの本を完成させたひとたちが打ち上げをやっているようだった。川島ママがかけた音楽は、エルヴィン・ジョーンズ&リチャード・デイヴィス『ヘヴィ・サウンズ』、武満徹の映画音楽集から羽仁進『不良少年』の音楽、それからビター・フューネラル・ビアー・バンド『ライブ・イン・フランクフルト82』(>> リンク)。最後の盤ははじめて聴いた。民族音楽のテイストの中にドン・チェリーのポケットトランペットが入ってくるという「はまり過ぎ」ぶりで、気に入ってしまった。こんど探そう。