Sightsong

自縄自縛日記

最近の『THE BIG ISSUE』

2008-08-24 23:03:58 | 思想・文学

明朝8 月25 日7 時半、NHK総合「おはよう日本」で泡瀬干潟の特集があるらしい。

経緯 → 「またここでも公然の暴力が・・・泡瀬干潟が土で埋められる
署名 → http://www.shomei.tv/project-97.html(匿名可) ※もう819筆(2008/8/24 23:13現在)。

ホームレスの仕事としてあちこちで売っている『THE BIG ISSUE』、たまたま最近続けて路上で買って読んでいる。300円で、『AERA』とか『NEWSWEEK』よりもよっぽど面白い。

98号(2008.7.1)の特集は「2008年、「島宇宙」の旅」朝崎郁恵の記事がいい。島唄を他の楽器と合わせることについて、「考えてみれば、島唄に三味線を合わせるようになったのも、せいぜい100年くらい前からのことなんですよね。その前は手拍子しかなかった。長い長い島唄の歴史を考えれば、ほかの楽器でも大丈夫だと確信したんです」と70を超える唄者が語っている。また、対馬、琉球が中国や東南アジアの交易ネットワークで果たした役割に関する記事があって、ちょっとこのあたりを追ってみたくなる。

99号(2008.7.15)の特集は「まるごと「地球温暖化」」。自分の飯の種と変に近いと、素直に読めないのが悲しい。ただ、中国山西省でのポプラ植林がいびつになっている実態が紹介してあるのが興味深い。砂漠化防止、水不足と「緑化のロマン」をあわせて考える際の参考になった。

100号(2008.8.1)の特集は「戦争は克服できる」。憲法9条が米国に必要だと語るアン・ライト、天木直人、きくちゆみの記事がある。また、雨宮処凛が、いまポレポレ東中野で上映している『アメリカばんざい』をすすめている。

知らなかったことは、「個人通報制度」。人権侵害を受けた個人が最高裁まで争っても救われない場合、こんどは国際的に訴えることができるとする制度だが、米国や日本は制度を受諾していないので使えない。政権の意向に沿い続けている最高裁が、国際的な視線にさらされるものとして価値があるかもしれないと紹介されている。

最新101号(2008.8.15)の特集は「ファーストピープル 先住民族たちのいま」。7月に北海道で行われた「先住民族サミット」の参加者の声を紹介している。

 

 

 

ところで、英国で1991年に創刊された『THE BIG ISSUE』だが、個々に製作・販売されている国はさほど多くない(英国、オーストラリア、アイルランド、南アフリカ、ナミビア、ケニア、日本)。

オーストラリアでも、先日、路上で売っていたので1冊求めた。5ドルだから日本の2倍程度だ。版形はほぼ同じで頁数は若干多い。この、303号(2008.5.6-19)の特集は「THE BIG SLEEP」、といってもチャンドラーではなく、不眠症や無呼吸症についての記事だった。それよりも興味を引いたのは、Bruce Mutardというメルボルン在住の漫画家による『The Sacrifice』という作品の紹介だ。アート・スピーゲルマンの『マウス』とも対比されるような、第2次世界大戦の物語だという。大所からの歴史物語などでなく、現代とのアナロジイも交え、そこに居る個人の目線で描かれたもののようだ。『マウス』は、私は大人になってから読んだが、それでも夜寝るときに怖かった。これはそのうち調べてみようとおもう。

saikinnno

ウカマウ集団の映画(3) ホルヘ・サンヒネス『地下の民』

2008-08-24 02:23:57 | 中南米

ホルヘ・サンヒネスの映画は、『地下の民』(1989年)だけヴィデオを持っている。面白いのだが、観ようとするたびに間もなく睡魔に襲われるのは、確かに、タルコフスキーやパラジャーノフやアンゲロプロスの作品にも共通するところがあるかもしれない。映画館で観れば、決して寝たりはしないのだが。

村から首都ラパスに出て、差別をおそれるあまり出自を隠してきた男セバスチャンが、一度は村に戻る。そこで彼は、村長にまでなってしまう。しかし、米国とそれに追従する軍事政権が村を支配するために見せてきた餌に食いつき、結果として村を追われる。しばらく経ち、アイデンティティを取り戻すため、セバスチャンは、殺されるかもしれない村に決意して戻り、仮面をつけて自ら死ぬまで踊り続ける。

それまでの作品と同様に、米国や軍事権力という「第一の敵」へのあまりにもあからさまな批判を剥き出しにしながらも、小さな民族集団、抵抗するひとびとへのまなざしを、作品として昇華させている。

ところで、先日あったサンヒネス作品の上映会の際に、『地下の民』のパンフがあったので買っておいた。あらためて、白人であるサンヒネスの持続力に驚かされる。ボリビアで活動していた1971年、軍事クーデターにより、アジェンデ政権下のチリに亡命。1973年、ピノチェトによる軍事クーデターに伴いサンヒネスへの逮捕状が出て、徒歩でアンデスを越えペルーに亡命。1975年、ペルーの右傾化によりエクアドルに移動。1978年、ボリビアの民主化運動に伴い帰国。1980年、ボリビアでの軍事クーデターに伴いサンヒネスへの銃殺命令が出て逃避。1982年、ボリビアの文民政権成立により再帰国。

現在、先住民出身のモラレス政権は、自分たちの権利を取り戻すべくエネルギーや鉱物の国有化を進めている。サンヒネスが現政権をどのように評価しているか、気になるところだ。

●参考 モラレスによる『先住民たちの革命』