科学映像館で配信している『石垣島川平のマユンガナシ』(伝統文化財記録保存会・下中記念財団、1982年)(>> リンク)を観た。
全く予備知識がないのだが、農耕暦の区切りである旧暦9月の節祭(セチ)に行われる祭祀であり、来訪神=海の神であるマユンガナシをそれぞれの家で招き入れる形式を取っている。マユンガナシになることができるのは、戌年生まれの者のみであり、クバ笠とミノに身を包んでいる。家々でもてなされているときのマユンガナシは、「ンー!」という声しか発しない。
神事のひとつひとつや小道具や役割に付された名前があまりにも多く、よくわからない。もっとも、第三者がすぐにわからないのは当然だろう。
しかし、その第三者が面白いとおもうのは、<土足で入り込む>ことを意味しない。このあたりは、この作品のような完成度の高いドキュと、テレビの再生産可能で想像しなくても他のものと比較可能なユニットにすぎない提示とを比較すればわかることだ。
マユンガナシから人間に戻るときには、暗闇で、関係者のみが関与すると決められているという。沖縄の御嶽やこのような祭祀に限らず、自分の故郷を思い出して感じることは、社会には<視線の届かない領域>が必要だということだ。私たちには、暗闇と森が必要だ。
それにしても、デジタル化とネットワークの限界があるとはいえ、フィルムにより製作された作品がデジタルであっても<フィルム臭さ>を残していることはとても嬉しい。
ところで、この『石垣島川平のマユンガナシ』や、『沖縄久高島のイザイホー(第一部、第二部)』(伝統文化財記録保存会・下中記念財団、1979年)(>> リンク)は、今度の9月、10月に開催される「'08 沖縄ドキュメンタリー映画祭」(>> リンク)でも上映される。貴重な映像を配信していることの証だろう。
祭祀の映像を観ている間は我慢していたので、ついでに『ビール誕生』(日本麦洒株式会社、1954年)(>> リンク)を、自家製のビール(もどき、と一応)を飲みながら観た。解説ぶりや映像の作り方は明らかに産業映画である。麦から麦芽が育っていく高速度撮影や、ホップの収穫などの映像は楽しい。15分と短く、自宅で酒を飲みながら観ると、酒が旨くなること請け合いである。
自家製のビール(もどき、一応)