太田昌国によりしばしば引用される、ボリビアの映画製作集団「ウカマウ」の特集上映が行われている(スペイン国営セルバンテス文化センター東京)。夕方所用で新宿に出たので、そのまま市ヶ谷で降りて観てきた。ホルヘ・サンヒネスの『落盤』(1965年)、『コンドルの血』(1969年)の2本である。
『落盤』は台詞のない短編であり、廃坑でひとりダイナマイトを仕掛け続ける男を追っている。市場に出かける妻を見送るときの孤独さ、インサートされる結婚式などの甘美な記憶、そしていまの辛さを凝視するまなざしが混ざり合って、既に職人的なつくりに見える。
『コンドルの血』は恐ろしい。いかにも「のうのう」と先住民社会に入り込んでいる「ヤンキー」の医師たちは、実は、優生思想の持ち主であり、先住民に不妊治療を施し続けている。また、警察を使って、公然と弾圧を行っている。その「ヤンキー」たちの正体に気付いた先住民たちは決起する。「ヤンキー」たちの描写はステレオタイプだが、実際に、アジアのバックパッカーたちの姿にかぶって見えてしまう。
ラストシーンで大勢が空に銃を掲げるところは、赤瀬川原平による『赤軍-PFLP 世界戦争宣言』のポスターを思い出させる。それにしても、正視がこわいほどの、スクリーンの向こう側からの凝視、それから理不尽な弾圧者への憎しみなど、ナマの姿に圧倒される。
ところで、会場に行ってみてはじめて、アルゼンチンの作家フリオ・コルタサルに関する展覧会が開かれていることに気がついた。コルタサルに関係する映画の特集上映もあるようなので、そのときにじっくり観るつもりだ。気がついてよかった。