Sightsong

自縄自縛日記

ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri

2017-12-04 22:07:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarriにおいて、ファビオ・ペルレッタ来日公演(2017/12/3)。

Fabio Perletta (Laptop, electronics)
Lorenzo Balloni (Laptop)
Tetuzi Akiyama 秋山徹次 (g)
suzueri すずえり (prepared p)

ファーストセットはファビオ・ペルレッタとロレンツォ・バローニとのデュオ。

バローニはNovationのミキサーをラップトップにつなげ左手でサウンドを操作しているのだが、その動かし方は微妙であり、とてもアナログ的なものに感じられる。一方のペルレッタもラップトップにミキサーをつなげている。さらにそこからは触覚のように世界とのミクロな接点が用意されている。木の小さな棒が斜めに重ねられて弄んだり、その上にアルミホイルを乗せて重力のバランスを崩したりしている。またポータブルレコーダーの2つのマイクには板紙の筒が近寄せられ、ハウルさせてはそれを阻む。ペルレッタはそれらの音をグラフィカルなインターフェイスを持つソフトで操作しつつ、かたや、テーブルの上での手仕事を増幅しているのだった。

ふたりのアクションを凝視しつつ耳を傾けていると、どちらの策動による音なのかはある程度はわかるものの、それらは共存しあい、ときには融合していった。サウンドは宇宙的なものから雨音のようなものへと変化してゆき、アンドレイ・タルコフスキー『ストーカー』における廃墟の中のように響いた。

セカンドセットは、ファビオ・ペルレッタ、秋山徹次、すずえり。

ペルレッタが創る、夜の虫の声。秋山さんはこちらに背を向けてその機を待つ。そして秋山さん、すずえりさんと前後して参入した。すずえりさんがピアノに仕掛けたギミックの数々は、まるで自らの意思をもった小動物のようである。すずえりさんはそれらの半生物たちを手で操作し、あるいはモーターによる自動的な動きにまかせる。ピアノの傍らで回る歯車が甲虫にみえる。

このふたりの小さくて大きい、無機物で有機生命でもある世界に挟まれて、秋山さんのギターは、研ぎ澄まされた音を発し続けた。サウンドパフォーマンスが収束に向かうと誰もが思っている中で、この世界はなかなか終わりを迎えない。緊張の糸は秋山さんの意思によるものか、演奏者も観客も息を殺す時間がしばしあって、ついに演奏が終わった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●すずえり
すずえり、フィオナ・リー『Ftarri de Solos』(2017年)

●秋山徹次
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO


The Quiet Sound Graphy@KAKULULU

2017-12-04 21:42:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

東池袋のKAKULULUにて、「The Quiet Sound Graphy」(2017/12/3)。

Azusa Yamada 山田あずさ (vib)
Motohiko Ichino 市野元彦 (g)

午後のまったりとした時間に木の床、ソファ。ノイズが無く、音域が高く透明なサウンド。これでは意識が朦朧としてしまう。市野さんは「地に着いていない」と発言した。

なぜrabitooに採用されなかったのか分からない「梟」や、ミルトン・ナシメントの「Travessia」など魅力的な曲が並ぶ。こうなると作曲であろうがインプロであろうが関係がないのであって、音そのものがそこにあるという感じ。最後は山田さんが弓でヴァイブを擦り、何が起きるのだろうと思っていたら、セロニアス・モンクの「Misterioso」。最後まで空中浮遊させられた。

●山田あずさ
Marimba & Contrabass Duo @喫茶茶会記(2017年)
Quolofune@神保町試聴室(2017年)

●市野元彦
rabbitoo@フクモリ(2016年)
rabbitoo『the torch』(2015年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
かみむら泰一『A Girl From Mexico』(2004年)


this cat、山田光&ライブラリアンズ@Ftarri

2017-12-03 10:37:55 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarriで、山田光さん主催のライヴ(2017/12/2)。

this cat (vo, synth)
Hikaru Yamada 山田光 (beat, sax)
Kaede Anasako 穴迫楓 (vo)

はじめはthis catによるソロ。打ち込みとキーボードのリズムが意図的にずれを生じてゆき、そこに囁くヴォーカルが乗る。鐘が響くような音色もあり、細野晴臣を思わせるコスミックな感じもあり、それらが朦朧として聴き手を包んでいた。最後に山田光がアルトで暴力的なブロウを入れた。

少々休んで、山田光&ライブラリアンズが1時間の演奏。バンド名は、ライブラリーから多くのサンプリングを行いサウンドを創り上げていくことから来ている。それも何かのコンセプトに沿っていて、たとえばこの日に演奏された「abroad is our backyard」には、「trouble」をキーワードにして、カシン+2、ホセ・ジェイムス、ダラー・ブランド、ピーター・フックの音源がサンプリングされている(あとでアンチョコを貰った)。演奏前にチャールス・ミンガスの「Orange Was The Color...」が聴こえたような気がした。

曲は『the have-not's 2nd savannah band』やその前のアルバムに収録されたものや新曲。穴迫楓がソフトなヴォーカルを聴かせる横で、山田光は、一緒に囁いたり、NumarkやMorgの機器を用いてサンプル音源を自在にコントロールしたり、アルトを吹いたりする。

1曲1曲は短めであり、そのことも相まって、サウンドの沼に沈んでいくのではなく、絶えず躁のなかにある世界が創出されている。楽園的であるということは根を持たないということか、それは、意図的に違うルーツのフラグメンツがサンプリングされているからなのかもしれない。しかし、浮遊するサウンドではなく、ピッチが変えられ歪み、異物がいきなり混入してきたりして、聴く者は油断することを許されない。

アルトも楔のような異物であり、ときに暴力的なそのフレーズと音色はとても面白いものだった。(そんなわけで、「abroad is our backyard」では、録音されたアルトとその場のアルトとがどのように共存するのだろうと思っていたら、失敗で中断されてしまった。)

山田さんは、来年にはヴォーカルなしのビート・アルバムを出すのだという。ちょっと楽しみである。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●山田光
Sloth、ju sei+mmm@Ftarri(2017年)
山田光&ライブラリアンズ『the have-not's 2nd savannah band』(2016年)
『《《》》』(metsu)(2014年)


ペーター・ブロッツマン+スティーヴ・スウェル+ポール・ニルセン・ラヴ『Live in Copenhagen』

2017-12-02 10:15:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

ペーター・ブロッツマン+スティーヴ・スウェル+ポール・ニルセン・ラヴ『Live in Copenhagen』(Not Two、2016年)を聴く。

Peter Brotzmann (sax, cl)
Steve Swell (tb)
Paal Nilssen-Love (ds, perc)

ブロッツマンは濁りの咆哮を放ち、スウェルはおそらくは身体を折り曲げつつ決して折れることのない奔流を作り出し、ニルセン・ラヴは全身ばねとなってつねに驚くべき強靱なパルスを・・・、って、つまりいつもと同じである。それ以上いうことはあまりない。

もちろんそれで良いのだ。かれらの姿が眼前に浮かび上がってくるような臨場感に満ちている。

●ペーター・ブロッツマン
ペーター・ブロッツマン+ヘザー・リー『Sex Tape』(2016年)
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』(2011年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
ヨハネス・バウアー+ペーター・ブロッツマン『Blue City』(1997年)
バーグマン+ブロッツマン+シリル『Exhilaration』(1996年)
『Vier Tiere』(1994年)
ペーター・ブロッツマン+羽野昌二+山内テツ+郷津晴彦『Dare Devil』(1991年)
ペーター・ブロッツマン+フレッド・ホプキンス+ラシッド・アリ『Songlines』(1991年)
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
『BROTZM/FMPのレコードジャケット 1969-1989』
ペーター・ブロッツマン
セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(1979-86年) 

●スティーヴ・スウェル
スティーヴ・スウェル・トリオ@Children's Magical Garden(2017年)
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』
(2016年)
ヨニ・クレッツマー『Five』、+アジェミアン+シェイ『Until Your Throat Is Dry』(JazzTokyo)(2015, 16年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)

●ポール・ニルセン・ラヴ
ザ・シング@稲毛Candy(2013年)
ジョー・マクフィー+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy(2013年)
ポール・ニルセン・ラヴ+ケン・ヴァンダーマーク@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』
(2011年)
ジョー・マクフィーとポール・ニルセン-ラヴとのデュオ、『明日が今日来た』(2008年)
4 Corners『Alive in Lisbon』(2007年)
ピーター・ヤンソン+ヨナス・カルハマー+ポール・ニルセン・ラヴ『Live at Glenn Miller Cafe vol.1』(2001年)
スクール・デイズ『In Our Times』(2001年)


「JazzTokyo」のNY特集(2017/12/1)

2017-12-02 09:56:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

「JazzTokyo」誌のNY特集、Jazz Right Now(2017/12/1)。

連載第27回 ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報

鬼才クラリネット奏者・サウンドアーティスト、ジェレマイア・サイマーマンへのインタビュー。翻訳・寄稿しました。

蓮見令麻さんの連載「ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま 第19回 ビリー・ミンツ・カルテット at Balboa」

ビリー・ミンツのライヴとインタビュー。

●Jazz Right Now
「JazzTokyo」のNY特集(2017/9/30)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/9/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/8/1)

「JazzTokyo」のNY特集(2017/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/5/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/3/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/2/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/10/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/9/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/8/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/6/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/5/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/1/31)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/12/27)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/11/21)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/10/12)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/8/30)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/7/26)


ムハール・リチャード・エイブラムス feat. マラカイ・フェイヴァース『Sightsong』(JazzTokyo)

2017-12-02 09:46:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

ムハール・リチャード・エイブラムス feat. マラカイ・フェイヴァース『Sightsong』(Black Saint、1975年)。しつこいようだが追悼のため、JazzTokyo誌に寄稿した。蓋を開けてみると記事の上にはワダダ・レオ・スミス、ジャック・デジョネット、チコ・フリーマンによる文章が寄せられており、わたしの場違い感が半端ない。

>> 追悼特集ムハール・リチャード・エイブラムス

Muhal Richard Abrams (p)
Malachi Favors (b) 

●ムハール・リチャード・エイブラムス
「JazzTokyo」のNY特集(2017/2/1)
ジャック・デジョネット『Made in Chicago』(2013年)
ムハール・リチャード・エイブラムスの最近の作品(1998、2005年)
『Interpretations of Monk』(1981年)
ハミエット・ブリューイット+ムハール・リチャード・エイブラムス『Saying Something for All』(1977、79年)
ムハール・リチャード・エイブラムス feat. マラカイ・フェイヴァース『Sightsong』(1975年)
ヘンリー・スレッギル(3) デビュー、エイブラムス(1962-77年)

●マラカイ・フェイヴァース
マラカイ・フェイヴァース『Live at Last』 (2003年)
カヒル・エルザバー(リチュアル・トリオ)『Alika Rising!』(1989年)
ドン・モイエ+アリ・ブラウン『live at the progressive arts center』(1981年)
マラカイ・フェイヴァースのソロ・アルバム(1977年)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴの映像『Null Sonne No Point』(1997年)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴ『カミング・ホーム・ジャマイカ』(1995-96年)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴの映像『LUGANO 1993』(1993年)
ムハール・リチャード・エイブラムス feat. マラカイ・フェイヴァース『Sightsong』(1975年)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴ『苦悩の人々』(1969年) 


Sun Ship@大塚Welcome Back

2017-12-01 07:59:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

大塚のWelcome Backにおいて、Sun Ship with ゲバラ(2017/11/30)。鳥取のゲバラさんが東京で演奏される機会はさほど多くない。今回1年半ぶりに行くことができてよかった。

Sun Ship:
Shunji Murakami 村上俊二 (p)
Takashi Namiki 並木崇 (ts, ss)
Satoshi Kawasaki 川崎聡 (b)
Kazushige Kitamura 北村和重 (ds)
with
Guevara Yuji Takenobu 武信ゲバラ (as)

今回は新作CDの発表とも重なり、収録曲が中心に演奏された。

ファーストセット、「I Can't Talk to You Now!」(並木)、「First Song」(チャーリー・ヘイデン)、「Go Back to My Country」(村上)。セカンドセット、「Six Sense」(並木)、「Imagine」(ジョン・レノン)、「Natural」(村上)、「Tomorrow」(村上)。

やはりこうして聴くと、各々のメンバーの際立った個性が伝わってくる。村上さんは力強い和音で杭を打ち込みながらしばしばドン・プーレンを思わせるようにサウンドをかき乱す。自身のソロに入る前の瀑布のような助走もトレードマークのようだ。バッキング時にも存在感が強い。ベースの川崎さんは、弦を指で弾くときも、まるで三味線をバチで叩くかのような撥音も粘りもあり、また、ノイズの濁流のアルコも、唄いながらのソロも素晴らしい。ドラムスのソロになると、それまでテンションを張ったままリズムを形成していたことがはっとわかる。「Imagine」での星のようなシンバルワークも見事。

そしてサックスのふたりである。ゲバラさんはしばしば小さめの音から入るが、音圧が右肩上がりでそのアルトが熱を帯び、震え泡立ち、濁ってくる。「I Can't...」や「Six Sense」ではエリック・ドルフィーを思わせる跳躍するフレーズもあった。一方の並木さんは常に太く乾いているのにやはり熱い。先を見通すような物語的なフレーズも印象的。そしてSun Shipのデビューアルバム『Live at "Porsche"』(1998年)でも演奏した「Natural」でのみソプラノを吹いたのだが、この熱気にと哀しさにはやはり20年が入っていた。

終わった後に、村上さん、並木さん、ゲバラさんにいろいろとこれまでの経緯を訊いた。Sun Shipの結成は1997年。「ということは20年」と言うと、「ああ20年か、そうか」と笑っていた。

さてこれから、新作の『Live at Blue Z』を聴くのが楽しみである。

●参照
Sun Ship@大塚Welcome back(2016年)
清水ケンG『Bull's Eye』(1996年)