口のきけないパキスタンの女の子が、願掛けに来たインドでお母さんとはぐれ、お母さんはパキスタン側に戻ってしまった!異国でさまよう彼女が知り合ったのは、ヒンドゥー教ハヌマーン(猿)神を心底敬う、バカがつくほど正直で真っ直ぐなインドの男。彼女に懐かれた男は、「敵対国」パキスタン、異教徒である彼女を疎ましくも思うが、彼女を母親の元へ送り届けようとパスポートもビザもないままパキスタンを目指す。
二国関係、宗教、食文化の違いなどが描かれ、それゆえの艱難辛苦が物語に面倒にし、厚みを加えている。ただしパキスタン(の人々)は悪として描かれてはおらず、体制側の圧力に対し庶民の善意が描かれ、彼の願いを援助する力となり緒対立を超えた人類愛が提示されている。インド映画お決まりの群舞シーンも数回、唐突感にはもう慣れた。特に男と女の子が最初に出会うシーンでのダンスは見事。
本作は離れた街から山あいの村へ向かうロードムービーでもあり、乗り物や景色も重要な要素なのが、旧作の再上映でありながら観に行った理由。冒頭のパキスタン(ラホール)~インド(デリー)国際列車「サムジャウタ急行」はかねてより乗ってみたい列車であり、雰囲気が窺えた。そして物語の後半に登場する、パキスタン国内のド派手なバス。設備的には遠慮したい感じだが、パキスタンを語る上で欠かせなそう。カラコルムエリアの雄大な眺めは、たとえヒマラヤトレッキングをせずともそこへ行くだけの価値はありそうに思えた。そろそろ、パキスタン訪問を検討してみようか。欲を言えばバングラデシュ(ダッカ)~インド(コルカタ)の国際列車とセットで「大インド縦断鉄道旅行」にしたいのだが。
2024年4月28日 川崎・チネチッタにて