これはすごいよ。
日本SF大賞受賞・・・読んでなっとく、である。
骨太、スケールの大きい作品。
上巻・・・498頁
下巻・・・573頁
上下合わせて1000頁以上、まこと、読みごたえがあった。
1000年後の日本が舞台、「呪力」(=PK能力)が普通に使える時代。
でも、「文明」は滅びており、電気も不自由なくらし。
子供たちは大人から管理され、「悪鬼」が伝説として怖れられている。
貴志祐介さんと言えば、「悪の教典」が文春ミステリ1位を獲得し話題になっている。
それ以前に書かれた長編が、この「新世界より」。
(作品で言えば「硝子のハンマー」と「狐火の家」の間に出版された)
読みやすさ、スピード感では「悪の教典」だけど、濃度で言えば、「新世界より」が圧倒的。
「悪の教典」が薄口に感じられる。
一部用語について解説した箇所があるので引用する。(下巻P397)
「でも、サイコっていうのは、精神とか・・・・・・精神異常者のことじゃないのか?」
(中略)
「カタカナで書くと同一ですが、ヒッチコックの映画で知られるようになった精神異常者を意味するスラングは、psychoです。これに対し、念動力を持った人々は、psykoと呼ばれていました。これは念動力=psychokinesisの略称から、一般に広まったと思われます」
(以上、引用終了)
故に、念動力=PK、と略称されるようになった、と思われる。
スケールの大きい作品が好きな方、高濃度作品が好きな方にオススメ。
また、「悪の教典」もの足りなく感じた方・・・ぜひ読んで欲しい。
それ以外の方には、オススメしない・・・この文字量に打ちのめされるから。
PS
敢えて、この作品の弱点を言うなら、主人公の個性が(さらに)欲しい。
イマイチ、魅力が乏しく感じられる。
【追加情報】
講談社より、この1月に文庫本化された・・・上中下3巻。
【ネット上の紹介】
ここは汚れなき理想郷のはずだった。1000年後の日本。伝説。消える子供たち。著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!第29回日本SF大賞受賞
【参考リンク】
→「悪の教典」貴志祐介