「無力感は狂いの始まり」(「狂い」の構造2)春日武彦/平山夢明
以前、「「狂い」の構造」を読んだ。→「「狂い」の構造」春日武彦/平山夢明
これは、その続編。(続編が出るとは、言いたい放題だったけど、わりと好評だったんですね)
さて今回も、そんな「言いたい放題」の対談。
でも、内容はちょっと薄味になったような。(「下品さ」は同じだけど)
前回の方が、面白かったように思う。(単に、気のせい?)
例によって、いくつか文章を紹介する。
(P13)
「今の日本が病んでいる最大の原因は心身ともに貧乏になったこと。特に経済的な理由が大きいんでしょう?」
「そして心の病が駆け込み寺になっている」
「(中略)でも、日本人って何だかんだ言っても我慢するよね。慣れるっていうか」
「不幸慣れする」
「それでぼやくの。母ちゃんっぽいんだよね。母ちゃんって、いつもおやじの文句ばかり言っているでしょう。嫌なら別れりゃいいのにと思うんだけど」
「ぼやきつつ耐えるんだよね」
(P19)
「自己肯定の出来ていない人は、基本的に自分を被害者だと規定するんだよね。被害者だから、自分は善人なの。社会のシステムなり、両親とか世の中の人たちの不理解によって、私はこういう不幸な状態にいるんですと」
(P28-29)
「さっきトラウマを擬人化しましたけど、それ自体がひとつのイニシエーションになっちゃってるんですよね。それを越えれば次の私になれる。無視することはあり得ない。乗り越えれば私は大人になれる、マトモになれるなんて、イニシエーションに変えて、結局トラウマにしてしまうんでしょう?ああ、もう自分とは切り離せない、捨てられない、みたいな。ところで一般人が、トラウマと戦って勝つ、その勝率はどのぐらいなんでしょうか?」
「まず、勝てない。そもそも勝ち負けって発想のところで負けている」
(P70-71)
「見境なく怒鳴り声を出す人間って、獣になってるわけでしょ。人間としての和解とか理解を超えてさ。獣になった瞬間に強くなるんだよ。人間を捨てて、わーっとやった瞬間に、こっちも中に入ろうという気はしなくなるもの。危ないから。(中略)その段階でバランス的には負けているんだよね」
(P172)
「アル中の治療ってさ、言い聞かせたってダメだから」
「どうするの?」
「本当にひどい目に遭わないとダメだから、ちゃんと「底つき体験」という言葉があるの。本当に身に染みないとダメだから。でも、底のつき方というのが、離婚されるはわ、職は失うわ、刑務所に入るわ」
「強姦されるとか」
「本当にひどい目に遭わない限り無理なんだよ。それでも、暫く経つとまた元の木阿弥になるのが多い(略)」
以上、いかがでしょうか?
気が向いたら、読んでみて。
【ネット上の紹介】
秋葉原通り魔事件、婚活殺人から巷の怪事件まで―正気じゃない!人間の深層に眠る狂気の種を抉り出す、伝説の不謹慎放談、まさかの第2弾。
[目次]第1章 無力感が人を狂わせる(狂気の世に思うこと、再び;平山夢明的怪事件 ほか);第2章 犬吠え主義者たちの饗宴(泣くことについて、再び;品のない狂気と大吠え主義 ほか);第3章 鬱と暴力と死体(遊園地で鬱は治らない;ローマ字ニュアンスで“UTSU” ほか);第4章 正論という狂気(嫌な話が読みたい!;ひどい物語の宝庫「南部文学」 ほか);第5章 ゲスさが足りない!(幼年期は愚行すべき!;幼児期に経験する「殺し」は重要 ほか)
著者紹介
春日 武彦 (カスガ タケヒコ)
精神科医。1951年、京都府生まれ。日本医科大学卒業。都立松沢病院、都立墨東病院勤務を経て、’07年より東京未来大学教授
平山 夢明 (ヒラヤマ ユメアキ)
1961年、神奈川県生まれ。’94年、『異常快楽殺人』(角川ホラー文庫)で作家デビュー。『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)で日本推理作家協会賞受賞、『このミステリーがすごい!』’07年版国内編第1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)