
「すかたん」朝井まかて
この方の作品を読むのは初めて。
どうだろう?、とおそるおそる読んだが、思った以上に良かった。
夫の赴任にともない、江戸から大阪にやってきた知里。
ところが、夫が急な病で亡くなる。
生活のため働き出す。
それも、問屋の住み込み女中に。
江戸の武士の妻だった者が、大阪の商人の女中としてやっていけるのか?
言葉の問題、文化の違いを織り込みながらストーリーが展開していく。
なじみのある地名、当時そんな名産があったのかと感心しながら読み進む。
話のエンディングは最初から見えているけど、それでも楽しく読める。
大阪の商人言葉も駆使して、よく出来ている。
P78
「儂は四十年ほど前、河内屋に奉公させてもらうためにこの道を逆に上がったんや。十(とお)の歳やった。親に貰うた名ぁが長市やから、丁稚名は長松やったな」
「丁稚どんの名前って、そういえばみんな松か吉がついてますよね」
「そうや、本名の上の字を取って、下に松をつける。五年ほど勤めたら吉の字をいただいて長吉、十年経って手代に引き上げてもろうたら長七で、二十年で番頭になったら長助、三十年勤め上げたら長兵衛を名乗り、暖簾と支度金を分けていただいて別家として一家の主になるんや」
【ネット上の紹介】
江戸詰め藩士だった夫の赴任にともなって、知里は初めて大坂の地を踏んだ。急な病で夫が亡くなり、自活するしかなくなった知里は、天下の台所・大坂でも有数の青物問屋に住み込み奉公することに。慣れない仕事や習慣の違いに四苦八苦し、厳しいおかみさんから叱責されながらも、浪華の食の豊かさに目覚め、なんとか日々をつないでいく。おっちょこちょいで遊び人だが、野菜にかけては暴走気味の情熱を燃やす若旦那に引き込まれ、いつしか知里は恋に落ちていた。仕事に恋に精を出す浪華の江戸娘奮闘記。