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「エンジェルフライト~国際霊柩送還士」佐々涼子

2013年04月21日 08時54分55秒 | 読書(ノンフィクション)

「エンジェルフライト~国際霊柩送還士」佐々涼子

外国で死ぬと遺体はどうなるのか?
外人が日本で死んだらどうするのか?
遺族の意向により、家族の元に送り届けるのが国際霊柩送還士。
第10回開高健ノンフィクション賞受賞作。
書評でも取り上げられている注目の作品である。

P8
外国から戻ってくる遺体には、エンバーミング(防腐処理)を施してあるのが普通だ。亡くなった人の静脈に管を入れて防腐剤を注入することにより、遺体は生前と変わらぬ外見を保つ。

P37
外務省の「海外邦人援護統計」(2001~10年)によると1年に約400人から多い時で600人の邦人が海外で亡くなり、エアハースでは毎年約200体から250体の遺体を運ぶ。特に海外から運ばれてくるとなれば病気のほか、事故、事件、災害など、自然死でない遺体も多くなる。

P121-122
もともと葬儀には説明のつきにくい慣習が多いものだ。
全国的によく知られているのは、死者の枕元に逆さにした屏風を立てる「逆さ屏風」だ。あるいは、湯灌のためのぬるま湯を作る時の「逆さ水」というのもある。通常湯をぬるくするには湯に水を足すが、この時に使うぬるま湯は、水に湯を足して作るのである。年長者の中には、今でも水に湯を足すことを「縁起でもない」と忌み嫌う人もいる。逆さのにする儀式はほかにもあげられる。死装束の左前や、地方によっては「逆さ布団」というしきたりもある。

P139
親を失うと過去を失う
配偶者を失うと現在を失う
子を失うと未来を失う。

読んでいて、もし自分が当事者なら・・・と考えながら読んだ。
海外に登に行くクライマーは多い。
万一に備えておく必要がある。
少なくとも、保険に入って、緊急連絡を知らせておく必要がある。
自費でエンバーミングして、遺体を日本に戻すには相当な費用がかかる。

【ネット上の紹介】
第10回開高健ノンフィクション賞受賞作 国境を越えて遺体を家族のもとへ送り届けるのが国際霊柩送還士の仕事。日本初の専門会社で働く人々と遺族の取材を通して、筆者は人が人を弔うことの意味、日本人としての「死」の捉え方を知る。