
「春を背負って」笹本稜平
笹本稜平さんと言えば、スケールの大きな冒険小説、と言うイメージ。
でも、本作品は、ホームドラマのような作品。
奥秩父の山小屋を舞台にした、心癒やされる連作長編。
P104
登山道が荒れる原因として最近気になるのがダブルストックだ。伸縮タイプのストックを両手に持つスタイルで、ヨーロッパアルプスのトレッキングコースのように道路幅が広ければ問題ないが、日本の登山道のように人ひとりすれ違うのさえ難しい狭い道では、超合金製の石突きが左右の路肩にダメージを与える。
P106
「日本人てのはなんでも右へ倣えだからな。客同士の会話でも、日本百名山のここへ登ったのあそこへ登ったのという話ばかりだ。観光地や温泉巡りの感覚で山へ来ちまうから、遭難や事故も絶えないわけだよ」
P257
「山が下界のようになに不自由ない場所になっちまったら、そもそも山に登る意味はないわけだからね。(後略)」
【参考】
本作品は、「劔岳 点の記」の木村大作監督によって、映画化された。
次にリンクしておく。(場所・人物ともに、設定が、原作と異なる)
映画『春を背負って』公式サイト
【ネット上の紹介】
主人公の長嶺亨は大学院卒業後、サラリーマンをしていたが、父親の訃報をきっかけに奥秩父の山小屋を継ぐことになった。そんな亨をサポートしているのが「ゴロさん」。父親の大学の後輩で、ひょんなことからホームレス生活をしていたが、亨の父親と再会、父親の死後、亨を手伝い始めた。ある日、年配の刑事がゴロさんそっくりの指名手配のチラシを持って亨の家にやってきた。あまりにも謎に包まれたゴロさんの過去。亨の心にうまれた疑いの灯。豊かな自然を舞台に描かれる山岳連作小説に乞うご期待!