興味深い話が盛りだくさん。
シェークスピア「リチャード三世」と「時の娘」を対比させ、肖像画からキャラクターを読み解いていく。
左がヘンリー七世、右がリチャード三世
どちらが悪人に見えるだろうか?
シェイクスピアによると、リチャード三世は極悪人。
スーラの『グランド・ジャット島の日曜日の午後』
右端の男女・・・夫婦でも恋人でもない。
P38
金持ちとその囲われた愛人に違いない。なぜならここはパリという都会の縮図であり、となれば至る所で見られたそういうカップルが描かれないわけがない。証拠はもう一つ。女性が紐で結わえているペットは猿で、猿が象徴するのは「悪徳」であった。(画像を拡大して見ると、確かに、夫人の足下に猿がいる)
ところで、この絵には日傘や帽子が描かれるが、現代女性の重要アイテムが描かれていない。
そう、『ハンドパッグ』だ。
P42
なにしろ、淑女は馬車で外出し、支払いその他めんどうなことは同伴の男性に任せるものであり、ハンドバッグを持つことやそれ自体も蔑視されていた。バッグを持たないのが淑女であれば、淑女になりたがる、あるいは淑女に見せたがる女性たちも極力何も持たなかった、日傘は持っても。それが時代の文化装置というものだ。
ちなみに、パラソルとは・・・
――パラpara(=よける)ソルsol(=太陽)・・・P39より
ゲーテは37歳の時、誰にも行き先を告げず、一人イタリアへ旅立った。
そして20か月にわたってヴェネチア、フィレンツェ、ローマ、ナポリ、シチリア島とグランドツアー。
ドイツに帰ってきたゲーテの変化は?
P100
帰国したその年にもう、身分もはなはだ低く教養もない少女と同棲を始めたのだ(後年、正式の妻にする)。南国の陽光を浴びて気づいたに違いない、上品すぎる有徳の貴婦人より、少々お馬鹿でも官能的な若い娘の方がずっといい、と。
ローマ近郊におけるゲーテの肖像
P202
ロシア革命後、共産主義を嫌って三万人ものコサックが国を捨てた。皇帝時代には国に留まったコサックが、スターリン体制では捨てたのだ!かのドン・コサック合唱団は、そうした亡命コサックたちが結成したもの。
ちにみに、ソ連を逃れて他国に渡った人々は、共産主義の赤と対立するものとして、白いロシア人、つまり白系ロシア人と呼ばれた。白人だから白系というものではない。
オスマン帝国のスルタンへ手紙を書くザポロージャ・コサック(イリヤ・レーピン1880年)
【ネット上の紹介】
人あるところに思惑あり。歴史をあぶり出す17の人間ドラマ。人気シリーズ第3弾。各絵画、関連年表付き。
選挙、決闘、手紙、さらには画中画や女性のバッグまで、絵に秘められた意味が解き明かされ、時代の息吹が蘇る。人気シリーズ第3弾。
“絵で知る”歴史はこんなにも面白い! ギリシャの神々、イエスや聖人に続き、人気シリーズの第3弾のテーマは、“人間”です。古代のハンニバルから20世紀を生きたユダヤ人画家まで、過去に生きて呼吸していた実在の人間たち。彼らは、「ゼウス顔負けの好色ぶりを発揮するし、悪魔よりなおひどい悪を為すかと思えば、時に聖人もかくやの自己犠牲を厭わない。権力欲にかられ、陰謀をめぐらし、名誉のために命を賭し、恋文を書き、選挙運動でただ酒を飲む……」。人間とはなんて興味深い生きものなのか――著者の深い眼差しと洞察で、選挙、決闘、手紙、さらには画中画や女性のバッグまで、絵に秘められた意味が解き明かされ、時代の息吹が甦ります。ターナー『吹雪、アルプスを越えるハンニバルとその軍勢』/ブリューゲル『死の勝利』 /ドラローシュ『ロンドン塔の王子たち』/ラファエロ『レオ十世と二人の枢機卿』/ティツィアーノ『カール五世騎馬像』/ガウアー『エリザベス一世』/フェルメール『恋文』/ゴヤ『異端審問の法廷』/スーラ『グランド・ジャット島の日曜日の午後』/グロス『恋わずらい』など全17篇。各絵画、関連する年表や家系図、地図を掲載。いずれも画家の心境やテーマ、時代背景などに光が当てられ、時代の息吹が甦ってきます。一芸術作品として眺めていた作品が全く違った絵に見え、歴史の面白さに引きずり込まれること間違いなしです!