「夢かさね 着物始末暦」(3)中島要
シリーズ3作目。
次の4編が収録されている。
菊とうさぎ
星花火
面影のいろ
夢かさね
●第一話「菊とうさぎ」について
メッセージがストレートに出ている作品。
初巻第一話の余一のセリフで、『女ときものはいくらでも形を変える』、ってのがあった。
手を変え品を変え、繰り返されるテーマ。
この章は、もっともストレートに出ている、と思う。
P45
「あたしの汚れも、落ちるかしら」
「落ちるも何も、おめぇさんは最初から汚れてなんていやせんよ。よしんば、一度汚れたって女ときものは生き直せる。おれはそう思いやす」
再び、物語の根幹にに触れる、重要エピソードが示された。
P73
――・・・・・・井筒屋には、近づけるな。
突然よみがえったのは、余一の親方のかすれた声・・・・・・あれは息を引き取る前の晩だ。不眠不休で付き添っていた余一を無理やり休ませると、親方が荒い息の下で六助ひとり言い残した。
●第二話「星花火」について
綾太郎の友人である平吉の妹・お三和が登場する。
綾太郎の家も、平吉の家も商家である。
家を継ぐということ、跡取りとしても覚悟。
平吉とお三和の父も登場し、親心を吐露する。
綾太郎も、まもなく嫁を迎える身である。
独りやってくる、お玉の気持ちに思いを巡らす。
●第三話「面影のいろ」について
過去の因果が、廻ってくる話。
お糸の母が片思いをしていた侍が江戸にやってくる。
お糸がいきなり手首を掴まれ、声を掛けられる。
「おくにっ」、と。(P158)
・・・それは母の名前だった。
林田修三という侍は、今は商人になっていた。
どうやら修三は、まっとうな商人でもなさそう。
あやしい上方の男女と組んで、桐屋のお玉をかどわかそう、としている。
それを知ったお糸も、とんでもないことに。
活劇シーンも盛り込まれた第三話、であった。
●第四話「夢かさね」について
お玉の嫁入り、カウントダウン状態。
周囲は慌ただしくなっていく。
お玉も気鬱になっている。
玉に仕える奉公人・おみつも、困ってしまう。
お玉と実母は不仲、である。
祝言をむかえる前に、和解させたい。
周りと相談して、おみつは一計を案じる。
一件落着したあと、おみつは旦那様に労いの言葉をかけられる。
「おまえのおかげで、お耀とお玉の気持ちがようやく通い合ったらしい。よくやってくれたね」
このあと、おみつはとんでもない秘密を打ち明けられる。
P257
「ならば、おまえにだけ話しておく。ただし、このことは他言無用だ。お玉にもお耀にも言ってはいけないよ」
「お嬢さんやご新造さんも知らないことをあたしに?」
「そうだ。いずれ知らせるときが来るかもしれないが、今は教えないほうがいい。そのつもりで聞いてくれ」
さて、どんな秘密なのか?
それは、桐屋の存亡にも関わる重要事項であった。
桐屋に脅し文と嫌がらせがあったが、その理由も、この秘密に付随する事柄であった。
衝撃をうけるおみつ。
P263
「旦那様、あたしはどうしたら」
「これから先、どんなときも、何があっても、お玉のそばにいてやってくれ。私の頼みはただそれだけだ」
父とおみつに、秘密のやりとりがあったなんて、まったく知らないお玉。
実母と和解したことで、穏やかな気持ちで祝言の日を迎える。
おみつに感謝するお玉。
「ひと月前は、こんな穏やかな気持ちで祝言の日を迎えられるなんて思ってもみなかった。本当にありがとう」
(中略)
「お嬢さん、やめてください。あたしは奉公人ですよ」
(中略)
「おみつは一生、あたしのそばにいてくれるのよね。あたしをひとりにしないんでしょう」
(中略)
「はい、死ぬまでおそばにおりますから」
現在、出版されているのは3巻。
これから先は、新刊が出るのを待つしかない。
いったいどう展開するのだろう?
気になる。
【ネット上の紹介】
柳原の床店で、六助はいつものように古着を扱っていた。そこへ見るからに様子のおかしい男が、風呂敷を抱えてやって来た。経験上関わらないと決めた六助だったが、隣店の長吉がその男に話しかけてしまう。男は女ものの藍染めの袷を、いくらでもいいから引き取って欲しいというのだ。傷みもなく真新しい袷、そして落ち着きのない男の様子からして、何か後ろ暗い事情があるはずと睨んだ六助。袷の出所を問い詰めると、男は踵を返して駆けだした。残された袷の持ち主を探るべく六助は、着物始末屋・余一の元に向かったが―(「菊とうさぎ」より)。話題沸騰のシリーズ、待望の第三弾!!