「3・11行方不明 その後を生きる家族たち」石村博子
家族が行方不明、という問題がテーマ。
3.11では、多くの方が行方不明となった。
いったい、心の中で、どう折り合いをつけたらいいのか?
死者として発見されたら、家族は歩き出すことが出来るかもしれない。
しかし、「行方不明」だと、「どこかで生きているんじゃないか」と考えてしまう。
深刻で微妙なテーマを、丁寧に取材されている。
P180
七月半ば、麻野さんは意を決して、死亡届提出のため市役所を訪れる。だが、いざ用紙に記入しようとしても、書き始めることがなかなかできない。提出したらそれきり社会的に存在しないことになる、それでいいのかと用紙の前で固まったようになっていると、年配の女性担当者が近づいてきて、声をかけてきた。
「もし、無事なことが分かったら、裁判所に申し立てれば、いつでも死亡を取り消せますよ」
それは、戸籍法第五章にある、戸籍の訂正のことである。
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死亡届の提出は、気持ちの区切りだけでなく、現実的な問題も大きな影響を及ぼしている。死亡認定がされると、生計を維持していた人の場合は500万円、それ以外の人の場合は250万円の災害弔慰金が支給される。一方、行方不明のままでいると、生命保険も下りないし、借入金があった場合は一定猶予期間以降、延滞金として利息がついてしまう。
【ネット上の紹介】
行方不明者の家族は遺族と呼んでいいのだろうか?東日本大震災から二年。いまだ行方不明者約二千七百人。娘を捜し続ける父、妻の勤務先に説明を求め続ける夫、親子二代で地域復興に頑張る経営者…行方不明者と共に生きようとする家族たちの想いを描いたヒューマンドキュメント。
[目次]
第1章 自分で捜せない、大熊町の苦難
第2章 犠牲を無駄にしないため闘う
第3章 捜す人々
第4章 海に嫁いだ娘
第5章 家も家族もみんな消えた
第6章 子どもたちとここで生きていく
第7章 津波との因縁、親子二代の地域復興