「蜩ノ記」葉室麟
146回直木賞受賞作。
秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられる。
そこへ、編纂補助と監視を兼ねて庄三郎が派遣される。
庄三郎は、秋谷と一緒に暮らし、その清廉さに触るうち、無実を信じるようになる。
いったい、彼は罪を犯したのか?事件の真相は?
ミステリ仕立てで物語は進行する。
P32-33
「蜩(ひぐらし)とは?」
庄三郎が訝しむと、秋谷はにこりとした。
「夏がくるとこのあたりはよく蜩が鳴きます。とくに秋の気配が近づくと、夏が終わるのを哀しむかのような泣き声に聞こえます。それがしも、来る日一日を懸命に生きる身の上でござれば。日暮らしの意味合いを込めて名づけました」
P220-221
「ひととしての縁(えにし)とは、どのようなことでございましょうか」
薫は首をかしげて訊いた。
「この世に生を享けるひとは数えきれぬほどおりますが、すべてのひとが縁によって結ばれているわけではございませぬ。縁で結ばれるとは、生きていくうえの支えになるということかと思います」
死を覚悟した生き方とはどのようなものだろう?
片鱗でも感じたくて読んでみたが…。
う~ん、凡人には、こうはいかないでしょうね。
【ネット上の紹介】
命を区切られたとき、人は何を思い、いかに生きるのか? 豊後羽根(ぶんごうね)藩の檀野庄三郎(だんのしょうざぶろう)は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村(むかいやまむら)に幽閉中の元郡(こおり)奉行戸田秋谷(とだしゅうこく)の元へ遣(つか)わされる。秋谷は7年前、前藩主の側室との密通の廉(かど)で家譜編纂(へんさん)と10年後の切腹を命じられていた。編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉(せいれん)さに触れるうち、無実を信じるようになり……。凛烈(りんれつ)たる覚悟と矜持(きょうじ)を描く感涙の時代小説!(平成23年度下半期 第146回直木賞受賞作)