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「週末介護」岸本葉子

2017年01月17日 20時49分05秒 | 読書(介護/終活)


「週末介護」岸本葉子

エッセイストの岸本葉子さんが、自らの体験、5年間の介護について書いている。
さすが文筆を生業にされているだけあって、文章が巧い。
自分が感じた事、介護される側、周囲の人間関係について細やかに描写されている。

P245
息を「引き取る」の表現があるように、最後の息は吸うという。吸って、それきり後が聞こえず、
「もしかして今、亡くなった……?」
 とベッドの足もとの方にあるモニターを見に行くと、少し間があって、再び吐く音がする。
文字どおり、息を吹き返すのだ。

女性への朗報
P270
50歳から婦人科でホルモン補充療法を受けている。更年期症状を緩和するとは知っていたが、婦人科の対馬ルリ子先生との対談で、女性の認知症リスクを男性並みに減らすことが期待できると聞き、次の月にはもう先生の診察室にいた。

【蛇足】1
介護は肉体的にも精神的にもしんどい。
兄姉や姉の息子と共に、介護を分担されている。
羨ましいかぎり。
介護される父も、穏和な良い感じの方だ。
それも羨ましい。
それだけで、精神的なダメージは少ない、と思う。
介護は、する方、される方の共同作業だから。

【蛇足】2
先日読んだばかりの「両親の送り方」(宮子あずさ)と、つい比べてしまう。
「週末介護」の方がずっと内容は充実している。
このあたり、プロの作家と、素人の違いでしょうね。
宮子あずささんも両親を看取り、看護師としての経験も豊富、東京女子医科大学大学院博士後期課程修了。 
即ち、「知識も経験もある」、ってやつだけど、それと読ませるテクニック、表現力は別物なんでしょうね。 (論文としては立派でも、心に届かない)

【参考リンク】
岸本葉子公式サイト

【ネット上の紹介】
高齢の父は穏やかではあるが認知症。自分の家の近くに父のマンションをローンで購入。きょうだいや甥たちも集まり五年の介護の日々。仕事との両立、親の変化への覚悟、お下問題、介護用品あれこれ…細々とした日常に介護の本質が宿る。父を送り一年。さびしいけれど、どこかスカスカした自由もある。親のことも自分の老後も気になる世代の「あるある」の日々と実感を、実践的かつ飄々と、ときにしみじみと綴るエッセイ集。

[目次]
みんなで分ければこわくない?
おしゃれとファッション
散歩にお出かけ
家でできるレクリエーション
トイレとテレビ
お風呂と洗濯
小さな大冒険
介護保険を利用する
入院、退院、また入院
「そのとき」が来た
振り返ることごと
そして第一歩