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「上海灯蛾」上田早夕里

2023年07月07日 07時51分34秒 | 読書(小説/日本)


「上海灯蛾」上田早夕里

1930年代、アヘンと青幇がテーマ。
上海が主な舞台だが、香港、満洲、ビルマにも移動。

想定以上に面白かった。一気読み。
上海裏社会が描かれるので、一癖ある人物ばかり登場する。
唯一、沈蘭の存在が普通なので救われる。

P29
青幇とは、中国社会を裏から支えている秘密結社である。その歴史も清の時代まで遡れる。河川で暴れる水賊から積み荷を守るため、水運業者が結束したのが始まりだ。当時、清政府は結社を禁じていた。加えて、水運業者はその頃から禁制品を運んでおり、秘密組織として成長せざるを得なかったのだ。

P42
「生まれつき体からいい匂いがする体質のことです。伝説によれば楊貴妃がそうだったとか。香水をつけなくても香りが常に漂い、体を洗ってもとれません」(中略)
芳香異体。

【ネット上の紹介】
一九三四年上海。「魔都」と呼ばれるほど繁栄と悪徳を誇るこの地に成功を夢見て渡ってきた日本人の青年・吾郷次郎。租界で商売をする彼のもとへ、原田ユキヱと名乗る謎めいた女から極上の阿片と芥子の種が持ち込まれる。次郎は上海の裏社会を支配する青幇の一員・楊直に渡りをつけるが、これをきっかけに、阿片ビジネスへ引き摺り込まれてしまう。やがて、上海では第二次上海事変が勃発。関東軍と青幇との間で、阿片をめぐって暗闘が繰り広げられる。満州から新品種を持ち出されたことを嗅ぎつけた関東軍は、盗まれた阿片と芥子の種の行方を執拗に追う。一方、次郎と楊直はビルマの山中で阿片芥子の栽培をスタートさせ、インドシナ半島とその周辺でのモルヒネとヘロインの流通を目論む。軍靴の響き絶えない大陸において、阿片売買による莫大な富と帝国の栄耀に群がり、灯火に惹き寄せられる蛾のように熱狂し、燃え尽きていった男たちの物語。