「幻の声」宇江佐真理
髪結い伊三次捕物余話シリーズ15冊読み返し。
江戸に暮らす人々の生活が、情感ある文章で描かれる。
①幻の声
②紫紺のつばめ
③さらば深川
④さんだらぼっち
⑤黒く塗れ
⑥君を乗せる舟
⑦雨を見たか
⑧我、言挙げす
⑨今日を刻む時計
⑩心に吹く風
⑪明日のことは知らず
⑫名もなき日々を
⑬昨日のまこと、今日のうそ
⑭月は誰のもの
⑮竈河岸
「竈河岸」P449著者あとがきより
私が江戸時代の人々に惹かれるのは、誰しも現実を直視して生きているからだと思います。(中略)髪結い伊三次シリーズを家族の話と片づけられるのは承服できません。私は人が人として生き行く意味を追求したいのです。それに家族の問題がたまたま絡んで来るだけのことなのです。
「明日のことは知らず」著者あとがきより
P293
私の病状が悪化して、よれよれのぼろぼろになっても、どうぞ同情はご無用に。私は小説家として生きたことを心底誇りに思っているのであるから。
「昨日のまこと、今日のうそ」大矢博子さんの解説より
P293
宇江佐さんはもういなくても、本を開けば、彼らはそこにいつでもいてくれる。こうして遺された作品がある限り、読み続ける限り、読者は宇江佐真理を忘れない。それが本当の供養なのだ。
宇江佐真理さんは2015年、乳癌で亡くなられた。66歳。
もう少し長生きしてほしかった。
【ネット上の紹介】
町方同心のお手先をつとめる廻り髪結いの伊三次。恋しい思い女・深川芸者のお文に後ろ髪を引かれながら、今日も江戸の巷を東奔西走…オール読物新人賞受賞