【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「目撃天安門事件 歴史的民主化運動の真相」加藤青延

2021年01月29日 08時07分05秒 | 読書(台湾/中国)


「目撃天安門事件 歴史的民主化運動の真相」加藤青延

著者は、元NHK特派員。
リアルタイムで、天安門を目撃・取材。
さらに、その後も調査・検証をすすめて本書を著した。

第一次天安門と第二次天安門事件
P43
周恩来追悼のために花輪を掲げて人民英雄記念碑に集まった多くの市民が、1万人を超える民兵や警察官によって広場から暴力的にけ散らされた。
当時政治の実権を握っていた毛沢東夫人の江青ら四人組を中核とする左派陣営は、周恩来の片腕として働いていた副総理の鄧小平が「背後で民衆を扇動し実権を握ろうと企てた」と非難し、鄧を失脚に追い込んだ。つまり1976年の第一次天安門事件は、左派幹部が右派の鄧小平を追い落とす口実に使われた。皮肉なことに、二度目の天安門事件といわれた今回は、その時とは主客が逆転し、結果的に鄧小平が学生や市民に牙をむき、彼らに寛容な姿勢を見せたリベラルな指導者、趙紫陽を失脚に追い込むことになった。

趙紫陽の元秘書の言葉
P64
「鄧小平はもともと100%趙紫陽のことを信じていた。だが、胡耀邦の追悼大会の件で、問題に気づいたのだ。趙紫陽は、ソ連でスターリン批判を行ったフルシチョフのように、自分が死んだ後自分を批判する秘密演説を行うのではないかと」


鄧小平は、なぜ表に出ず、垂簾政治のようなことをしたのか?
P79
それは、自ら保守的な側面を保ちつつ、開明的な政治を部下の胡耀邦や趙紫陽にやらせることで、若者たちの指示を集め、万一行き詰まれば部下のクビをすげ替えることで、自らの権力を保ち続けようとしたからではないのか。

戦車男の正体
P223
それは「あの勇ましい男と戦車の光景」は、「戦車は人をひかない」ということをわれわれ外国の報道機関にアピールするために当局側が仕組んだ「自作自演」である可能性を示唆する言葉だった。(それまで、陰で、さんざんひき殺している)

P229
習近平をはじめ、中国指導部の多くが、なぜ自らの子息や令嬢を、彼らが「最も精神汚染されている」とみなす米国や英国に留学させてきたのだろうか。彼らが「人民」に求めてきたことと、大いに矛盾しているのではないか。



【雑記】
歴史上、気になる事件、引っ掛かる出来事、ってのがある。
天安門事件も、そのひとつだ。
いったいアレは何だったんだろう、と。
それが今回、本書を読む動機だった。

結局、第一次天安門、第二次天安門事件、どちらも共産党内部の権力闘争なのか、と。
戦車男は、自作自演だったかも、と。
天安門広場に最後まで残っていた3,000人か4,000人の学生は、全てひき殺されたわけじゃなく、戒厳軍と交渉して、自主撤退した、と。
本書を読む限り、そのような結論に至る。(この結論は信憑性が高いように感じる)

この記事についてブログを書く
« 知ってるワイフ | トップ | 「家族終了」酒井順子 »

読書(台湾/中国)」カテゴリの最新記事