「すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない」鈴木涼美
15のシチュエーションで、30人の女性への聞き取り調査。
P36
思えば女の一生は、妊娠を心配する10代20代に次いで、不妊を心配する30代40代が始まり、子どもができない身体になって終わる。高校生や大学生は基本的に生理が遅れるたびに、酔って甘かった避妊を後悔し、妊娠検査薬を天にかざして祈り、遅れてきた生理に安堵の涙を流して生きている。
P102
「どうせなら、高校生とか暇なときに子供産む方か゛いい気がする」
P132
いかにも男ウケを狙ったファッションやキャラ作りというのは得てして他の女からの評判を落とすが、男に全くモテない人生というのはそれはそれで他の女からバカにされるものだ。つまり私たちは、男ウケをそんなに狙っていないふりをして男ウケを狙う、というものすごく手の込んだことをしながら生きていかなくてはいけない。そうです、女は面倒臭いんです。
【感想】
人生の節目で様々な選択を迫られる。
結婚するかどうか?
子供を産むかどうか?
仕事を続けるかどうか?
理性で夫を選ぶか、胸キュンで選ぶか?
しかし、どの選択をしても後悔は残る。
選ばなかった選択肢を振り返ってしまう。
ひとつ選ぶとひとつ失う。
本書は30代の女性たちが登場するが、
さらに歳をとるとどうだろう?
認知症のお年寄りは、あるはずのない物を探すことがあります。
(中略)
年をとるということは、多くのものを得て、そして失うということでもあります。あなたはいまも生きているし、あなたのことを大切に思っている人がここにいる。そのいちばん大切なことは何も失われていないということを、探し物を一緒に探すという行為を通して伝えます。(「認知症介護びっくり日記」)
【関連図書】
女性への聞き取り調査というと「沼で溺れてみたけれど」を思い出す。
【ネット上の紹介】
キャリア、結婚、子育て、不倫。女の人生には、果てしない選択肢があり、そのどちらも、意外としんどい。風俗やAVの経験も持ちつつ、東大大学院で社会学を修め、元日経新聞記者でもある、気鋭の書き手、鈴木涼美が、15のシチュエーションで、30人の女性を取材。30代半ばの女のリアルを、エッジの聞いた文章で読ませます。女の人生、15本勝負。軍配はどちらに! 生きるヒントが見つかる、注目のエッセイです。
会社人生―会社は真綿でできた鉄の檻。いてもやめても苦しい
不倫問題―専業主婦を見下す独身、でも妻の方は…
子作り―早く産むか遅く産むかで、女の人生は引き裂かれる
学歴―使えない高学歴は無意味、でもそれがないと…
雇用形態―本当にやりたいことは会社じゃできない、という夢想
出身地―都会のど真ん中で婚期を逃すか、ワンオペ育児か
独身生活と結婚願望―好きでなくなったら別れる、で、なんでいけないの?
ママ―自分が何者でもないのは、会社員も専業主婦も同じ
旦那のスペック―夫に期待したのが間違いだった。主婦が夢から覚める時
モテ―いつまでもモテ続けるわけではないという絶対真理
自分の歴史―過去をひきずり、人生に折り合いがつけられない不幸
東京と地方―キラキラの東京は、捨てるにはあまりにも惜しくて
彼氏―頭の満足と、心や子宮の満足はまったく別もの
地方と都会の不倫事情―ママ友がいたって、寂しさは消えないから不倫する
港区女子―キャバ嬢とソーシャライトの間、それが港区女子