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「キジムナーkids 」上原正三

2017年10月18日 02時28分03秒 | 読書(沖縄・八重山)


「キジムナーkids 」上原正三

戦後間もない頃の沖縄が舞台。
子どもの目を通して沖縄が描かれる。
ウルトラマンのシナリオライター上原正三氏の自伝小説。
5人の子どもたちを中心に周囲の大人たちも描かれる。
戦争をどう生き抜いたのか、ときおり登場人物たちの回想シーンが入る。
それは生きているのが不思議なくらいの凄絶な過去である。

P298
シュルシュル!夜明け前の空を切り裂くように光の矢が頭上を過ぎてゆく。艦砲射撃が始まったのだ。ハルはイモをカマスにつめて家族が避難する墓へ急いだ。ハルの目の前で爆弾が墓に命中した。ハルも爆風に飛ばされたがすぐに立ち上がり走り寄った。
「かあちゃん、とうちゃん!ああ」
 両親が、おじい、おばあが砕けた墓石に埋もれて動かない。弟のヒデオの手が動いた。
「ヒデオッ」
 ヒデオが目を開けた。
「ねえちゃん」ヒデオは微かに笑い、手を伸ばした。
「しっかりッ」
 ヒデオはハルの手をしっかり握りしめた。ハルはヒデオを助けようと必死で引きずり出した。
ずるずると臓器が長く伸びている。ヒデオの内蔵だ。ハルはその場で気を失った。

P106
 ひめゆりの塔の前で車を降りて塔に向かって歩き出した時、「セイちゃーん、セイちゃーん」と呼ぶ声がした。空耳かと思った。だけどまた聞こえた。「セイちゃーん」。見えた。ガマの方から小学校から一緒だったスミちゃんや隣の席で仲良くなったテルちゃんが笑顔で手を振りながら駆け寄ってきた。その姿は半透明でゆらゆら揺れ、次第に実体になった。

【感想】
おそらく、今年度ベスト作品、と思う。
お薦めです、読んでみて。
ちなみに、(本作以外で)沖縄を舞台にした作品、私の選ぶベストは…



【ネット上の紹介】
出会い、友情、冒険、好奇心、別れ…そして、希望。たくましく生きた子供たち“キジムナーkids”を、ウルトラマンのシナリオライターがみずみずしく描く自伝小説。

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