「嘘つきは姫君のはじまり~貴公子は恋の迷惑」松田志乃ぶ
「夢見るころを過ぎても」とともにシリーズ番外編、2冊同時発売のかたわれ。
短編3編、ショートショート3編、マンガ1編収録されている。
表題作「 貴公子は恋の迷惑」もよかった。(続きを読みたい)
でも、何と言っても「愛しき言つくしてよ」が読みごたえがあった。
真幸と有子姫の物語。 (涙、涙)
いったいどうなるのか固唾をのんで読み進んだ。
素直じゃ無い有子姫は、自分の心をさらけ出せるのか?
掌中の珠・宮子を失った悲しみを乗り越え、真幸は次の行動に移れるのか?
ここからネタバレありなので、ご注意。
P246
「あれほどの求婚者たちを措いて、身よりも財産も何もない、あの青年を選ぶのか?」
「そうよ、お父さま」
「そうか。――ならば、有子、これから私はおまえをもう娘とは扱わぬ」
(中略)
「親の義務は終わった。娘の幸せにこころを砕く必要もなくなった」
「お父さま」
「――だからもう、幸せは自分の手でつかみなさい」
「兼通かわいそ~」、と思うかもしれない。
でも、よく考えると、もともと宮子と真幸の仲を引き裂いたのは兼通である。
そして、兼通の思惑どおり宮子と東宮がくっついた。
真幸が自分の娘・有子と結ばれ、有子を失ったのは『身から出た錆』。
仏教説話で言えば、『因果応報』の話、とも言える。
さて、P204で、文殊丸が登場。
元服して今は源頼光となった。
手元の旺文社・日本史事典によると、次のように書かれている。
948-1021 平安中期の武将
満仲の長子。摂津の守など受領を歴任。摂関家に仕え武名高く、大江山の鬼退治等の伝説もある。富裕なことも名高く、弟・頼信とともに武士勢力の発展に寄与した。
真幸は、この頼光の信頼厚く、一の従者なので、のちのち出世したのは間違いない。
案外、四天王の1人が真幸かもしれない。
この作品は、けっこう史実と虚構が入り交じっている。
さらに調べると面白くなるかもしれない。
ちなみに、何度も物語に登場する名刀・髭切は現存する。
現在、北野天満宮所蔵、重要文化財である。
髭切りの太刀
源頼光
【追加資料】(ウィキペディアより)
橋姫の腕を斬った「鬚切」は実在し現存する日本刀で、この事件により「鬼切(おにきり)」と呼ばれるようになった。
綱の羅生門の鬼退治(『酒呑童子』)や多田満仲の戸隠山の鬼退治(『太平記』)などにも使われたとされる、鬼と縁が深い名刀である。橋姫が浸った川は宇治川で、祭られているのは宇治川の宇治橋だが、綱が橋姫と出合ったのは堀川の一条戻り橋である。
・・・橋姫伝説は、今読んでも生々しく、奥の深い話、と思う。
髭切りは2尺7寸(81㎝)と、現在の竹刀の長さから見ると、少し短く感じられるが、当時としてはおかしくない。
ちなみに、私が高校時代、体育授業で使用した竹刀は3尺8寸(通称サンパチ、中学時代はサブロクを使用)である。(byたきやん)
ウィキペディアでは、次のように説明されている。
現在の全日本剣道連盟の公式試合用の竹刀には長さ重さの規定があり、主に小学校高学年用の36(3尺6寸、111cm 以下、370g以上)、中学生用37(3尺7寸、114cm 以下、男性440g以上、女性400g以上)、高校生用38(3尺8寸、117cm 以下、男性480g以上、女性420g以上)、大学生・一般用39(3尺9寸、120cm 以下、男性510g以上、女性440g以上)がある。大学生以上の場合、3尺9寸が上限となっているのは、従来の3尺8寸を、日本人の体格向上にあわせて1寸伸ばしたものである。
【ネット上の紹介】
平安男子たちの波乱の恋模様はコチラ! 平安男子たちの恋模様を詰め込んだスピンオフ作品、雑誌掲載時に大反響を呼んだ「嘘つきは貴公子のはじまり」が大幅加筆修正で登場! 次郎君の表情が眩しい「まんが版 夢で逢えたら」も収録。