原題:『La Piscine(スイミングプール)』
監督:ジャック・ドレー
脚本:ジャック・ドレー/ジャン=クロード・キャリエール
撮影:ジャン=ジャック・タルベ
出演:アラン・ドロン/ロミー・シュナイダー/モーリス・ロネ/ジェーン・バーキン
1969年/フランス・イタリア
余計なアリバイ工作について
作品前半のサントロペの豪華な別荘でジャン・ポールとマリアンヌと、彼女の元恋人であるハリーと彼の18歳になる娘のペネロープがグダグダ過ごすシーンはたわいない会話さえも少なく静かな心理戦が展開されるのであるが、プール沿いで酔ったハリーがジャン・ポールを殴ったことから生じる殺人事件からようやくストーリーに緊張感が漂うようになる。しかしハリーを溺死させたジャン・ポールが仕組むアリバイ工作が何ともいい加減なもので、溺死したハリーをそのまま放っておけば良かったのに、作家としての矜持が災いしたのか余計な‘物語’を作り出し、わざわざ服を着せ替えて新しい服を用意してしまったことで、却って捜査した警部に怪しまれることになる。このアリバイ工作のヌルさがジャン・ポールを作家として大成させなかったことを証明してしまうのであるが、事件そのものはマリアンヌの協力により、事故として処理されることになる。マリアンヌは一度はジャン・ポールと別れる決心をするのであるが、もとの鞘に収まってしまうところにジャン・ポールの成長を阻む要因がある。それを分かっていながら別れられないマリアンヌの自責の念は察するに余りある。