原題:『二つの祖国で 日系陸軍情報部』 英題:『MIS Human Secret Weapon』
監督:すずきじゅんいち
脚本:すずきじゅんいち
撮影:小渕将史
出演:グランド・イチカワ/ノーマン・ミネタ/ダニエル・井上/リチャード・ホーキンス
2012年/日本・アメリカ
情報収集の日米の認識の差について
日系人には、アメリカで生まれた日系移民第2世代の「二世(Nisei)」と、アメリカで生まれ、日本で教育を受けた「帰米(Kibei)」の2系統が存在し、彼らは米国陸軍の秘密情報機関=MIS(ミリタリーインテリジェンスサービス)に集められ、日本軍に関する情報収集に活躍したことが証言されている。この情報収集に関する日米の認識の差は歴然としており、例えば、連合軍の兵士たちは情報の記録は禁止されていたが、日本兵は日記に自身の行動を記録していた。その中には「日本軍が一発放つと、相手は十発返してくる」というような書き込みがあり、既に軍のレベルの違いを実感し、士気が低下していたことが分かる。日本軍は全将校のリストを発刊したりしており、通信時にも暗号が使われることがなかったために、やがて日系2世のハロルド・フデンナ(Harold Fudenna)により、山本五十六連合艦隊司令長官がニューギニアに前線視察に行くことを事前に察知され、搭乗機がアメリカ軍によって撃墜された(海軍甲事件)。日本兵は捕まった時は自決するように教えられていたが、捕虜になった時の教育は受けていなかったために、例えば、アメリカ軍ならば捕虜になった場合に、名前と階級と認識番号しか答えないが、日本兵は親しくなると全てを話してしまう。女性や子どもに避難を呼びかけるために、アメリカ軍は短波放送で爆撃予定地を伝えていたが、おそらく誰も聴いていなかったであろう。終戦後、横浜から東京までは建物など無く、煙突だけが立っているような状況だったが、東京にはオフィスビルやホテルが残っていた理由は、占領後にアメリカ軍が事務所や宿舎に利用するためだったという余裕から、微塵も勝ち目がなかったことが分かる。