原題:『Milestones』
監督:ロバート・クレイマー/ジョン・ダグラス
脚本:ロバート・クレイマー
撮影:ロバート・クレイマー
出演:G・W・アボット/アンバー・アン/ローレル・バーガー/ノア・バーガー
1975年/アメリカ
子どもを持ったヒッピーたち
冒頭はウェールズからニューヨークに移住してきた、1891年生まれのヘレンの人生が描かれる。縫製を生業としていた家族を手伝っていたヘレンはチョコレート工場でラベル貼りもしながら家計を助けていた。1911年に結婚し、カレンとエリザベスという2人の娘を授かるが、間もなくして夫を戦争で失う。ヘレンはレスリー・ランブルというアメリカ兵が相手の捕虜になっている映像などを入手しながらヴェトナム戦争に関する記録映画を製作している。
タイトルの「マイルストーンズ」とはヴェトナムの政治家であるホー・チ・ミンの言葉から取られており、他にも、アメリカの奴隷制度廃止運動家であるジョン・ブラウンやアメリカの女性解放運動家であるハリエット・タブマンの言葉が引用されている。
ケシャ族やナバホ族などのネイティブアメリカンと白人との微妙な関係も描かれている。盲目のジョンが轆轤で作り出す壺をサル(1957年に出版されたジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード(路上)』の主人公と同じ名前)が教えられて作る理由も、ネイティブアメリカンのような生き方に憧れているからであろう。
ヴェトナム戦争の兵役忌避を手助けした罪で服役していた息子のピーターを心配する医師の父親は、大学に戻って勉強をし直すように促すが、左翼ラディカルの精神はなかなか捨てられないようである。
ローレルは仲間と一緒に長い距離をあちらこちら歩きながら意見を交わしている時には問題ないのであるが、妻のノアと息子と一緒にクルマで旅を始めるとすぐに喧嘩になってしまう。お金に困っていたラリーは友人に誘われて窃盗目的で屋敷に侵入した際に、待ち伏せしていたように警備員がおり、ラリーは呆気なく撃ち殺されてしまっていた。
クライマックスにおいて臨月を迎えていたカレンが多くの友人たちに囲まれて実際に出産するように、本作はコミューン、インディアン、ヴェトナム、キューバを絡めて、人生は革命そのものだと思っている若者たちが、子どもを持った時に直面する問題が描かれている。そしてその答えは『ルート・ワン/USA』(1989年)で確かめに行くことになるであろう。