原題:『黒線地帯』
監督:石井輝男
脚本:石井輝男/宮川一郎
撮影:吉田重業
出演:天知茂/細川俊夫/三原葉子/三ツ矢歌子/大友純/鳴門洋二/宗方祐二
1960年/日本
「黒線地帯」の笑えない状況について
「黒線地帯」とは赤線廃止後に、地下の潜ってしまった売春組織と麻薬組織がたむろする場所である。主人公でニュースのトップ屋の町田広二は売春組織に関わっているパリ一座の踊り子である大沼麗子を追っているところから映画は始まるのであるが、翌朝ホテルの一室で目覚めると、広二はベッドの上で死んでいる麗子を見つける。自分を罠にはめた者たちの追跡劇が始まる。
さすが石井輝男監督作品だけあって、クライマックスにおいて広二が殺し屋のジョーを追いかける際に、列車に飛び乗り、鉄橋あたりで水面に落下し、貯木場上の対決ではコマ落としによる演出で最後に広二がジョーを駆けつけてきた警察に引き渡すまでの一連のアクションの流れは巧みであるが、例えば、「ブルームーン(Blue Moon)」というキャバレーで広二を最初に接待したホステスは「唖」で、次に来たホステスたちはゲイなのである。それ自体は悪くはないのだが本作ではフリークス(怪物)のような扱いで登場させており、これは本作の公開当時としてはギャグとして機能したではあろうが、今となっては笑えない演出である。