黒沢清監督『散歩する侵略者』に前田敦子、東出昌大、小泉今日子ら出演
“常連”黒沢清監督、カンヌ3度目の受賞なるか 外国人記者も高評価「らしさ出ている」
黒沢清監督がカンヌで受賞を逃した理由とは?
原題:『Personal Shopper』
監督:オリヴィエ・アサイヤス
脚本:オリヴィエ・アサイヤス
出演:ヨリック・ル・ソー
出演:クリステン・スチュワート/シグリッド・ブアジズ/アンデルシュ・ダニエルセン・リー
2016年/フランス
ホラー映画とユーモアの組み合わせについて
主人公のモーリーンは忙しいカイラというセレブの代わりに服やアクセサリーを購入するパーソナル・ショッパーの仕事をしている。モーリーンは三ヵ月ほど前にルイスという双子の兄弟を亡くしており、ルイスが元恋人のララと住んでいた家を知人のカップルに売却する話が出ていたのであるが、そんな時、モウリーンの携帯電話に送信者の分からないメッセージが届くようになり、彼女の周辺で奇妙な出来事が起こるようになる。しかしモーリーンとルイスは2人とも霊媒体質で2人は生前、「死んだ後に何かサインを送る」という約束を交わしていたので、ルイスからのメッセージだと信じてやり取りを続ける。
本作は例えば、ヒルマ・アフ・クリント(Hilma af Klint)というスウェーデンの神秘主義の女性画家や、フランスの作家ヴィクトル・ユゴー(Victor Hugo)の降霊術の実験も描かれ幽霊は実在するという前提を含意させようとしている。
カイラが殺された現場に遭遇したモーリーンが帰宅するとカイラの所有していたアクセサリーが置いてあり、自分に容疑がかかりそうになるのだが、その結末に関しては敢えて触れないでおこう。雇い主を失ったモーリーンは恋人のゲイリーがいるオマーンへ向かう。
しかしそこでも壁がなる奇妙な現象に遭遇してしまう。壁が一度鳴れば「イエス」、二度鳴れば「ノー」という決まり事を作り霊との交信を試みる。ここで重要な問いは最後のものである。モーリーンが「これ(=壁の音)は私の気のせいなの?(Is this coming from me?)」と訊ねるとノックが一度鳴る。今までパーソナル・ショッパーという他人の物を購入する仕事をこなし、自分ではなく亡くなったルイスのことばかり気にかけているモーリーンには「自分」というものがなかったし、せいぜいカイラの服を内緒で身に付けて満足する程度だった。そんなモーリーンにルイスは、双子の自分は「モーリーン」として生きているし、亡くなった自分のことは忘れてモーリーン自身の人生を歩んで欲しいというメッセージを送ってきたのである。
おなじようなホラー映画を撮ってても、オリヴィエ・アサイヤス監督にあって黒沢清監督に欠けているものはこのようなユーモアであり、それがカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品できるか「ある視点部門」に甘んじるのかの違いとなって表れていると思うのである。