MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「魔法の扇風機」の威力について

2017-06-25 22:08:42 | 邦楽

【MV】ドリアン少年(Short ver.) / NMB48[公式]

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 須藤凛々花の「怪しさ」は以前から感じていた。2016年10月26日に放送された「AKB48のオールナイトニッポン」においてNMB48のメンバーである山本彩と白間美瑠と共に出演していた須藤凛々花は小学校4年生頃に作った自作曲を披露したのである。「魔法の扇風機」というタイトルの歌詞を書きおこしてみたい。

「魔法の扇風機」須藤凛々花

ヤなことも悲しいことも
全て吹き飛ばしてくれる
だけど大人は言うよ
そこに指を突っ込んではいけないと
でもこの衝動は抑えきれない
いつか入れたい人差し指

 自身でキーボードを弾きながら歌ったこの曲は明らかにオナニーについての歌なのであるが、隠しきれないほど性欲の強い女の子がアイドルをしていることに違和感を持ったのである。「人を好きになって、恋愛禁止ルールで我慢できる恋愛は恋愛じゃないと思った」その恋愛を須藤以外の多くの他のメンバーは我慢してアイドル活動に貴重な青春を捧げているのである。ストイックに生きることを強いられるアイドルとして一流になれない人が、ましてや哲学者になどなれるのだろうか。フリードリヒ・ニーチェの哲学とは「知識」ではなく「生き様」だったはずなのだが、まさか言い訳の道具として「哲学」が使われるとは思わなかった。これならばエッセイに何気なくアルトゥル・ショーペンハウアーの「女について」を引用する乃木坂46の齋藤飛鳥の方がよっぽど哲学者然りであろう。

 秋元康に無断で結婚発表することなどあり得るのだろうか。信じられん。肝心なところはスタッフに責任を転嫁するところなども安倍晋三首相にそっくりである。

 ところで日刊ゲンダイに掲載されたアイドル評論家の中森明夫のコメントは納得しがたいものだった。

「そもそもAKBとは何かを考えてほしい。既成の概念にとらわれない壮大なアイドルの実験場だったはずなんです。それがCDを買わせて人気投票を行う総選挙も批判の的だったのが9回目を迎えて当たり前の行事になってしまった。そして指原1強にうんざりしていた閉塞感。それを須藤がぶち壊したことで爽快な風が吹いたのです。ドーム球場でやる野球はそれはそれで快適ですが、天候と同じく予定調和ではなく、思い通りにいかないからこそ人生は面白い。賛否両論、激論を喚起した須藤の行為こそが、これぞAKBという痛快な出来事なのです」

 AKB48が「壮大なアイドルの実験場」というのは分かるのだが、この「実験場」で莫大な利益を得ているのは秋元康を初めとする運営側で、試行錯誤しながらより良質のビジネスモデルを築いていけるだけであって、現場にいるアイドルは「モルモット」でしかなく、グループを卒業した後のサポートもなく実質「使い捨て」というのが現状であろう。2017年6月22日の毎日新聞でも中森明夫はコメントしている。

「彼女の衝撃的な発言で、興味がない層も『アイドル、結婚とは何か』を話題にした。息苦しさが漂う現代社会に風穴を開けてくれたとさえ思う。既成概念を崩してきたのがAKB。」

 「(AKB48に)興味がない層も『アイドル、結婚とは何か』を話題にした」のは確かだが、ただそれだけのことで彼女たちを応援する人が増えるわけではなく彼女たちの待遇が良くなるわけでもない。そもそもアイドルの既成概念を崩すということは信用を失うということにつながるのではないのか。アイドルでいることが「息苦しい」のであるならば辞めればいいだけの話なのであって、例えば私たちが小島瑠璃子や岡田結実や広瀬すずが男性と交際していようが突然結婚発表しようが文句を言わないのは彼女たちには実力があってアイドルとしてファンからお金を徴収している訳ではないからである。

 中森明夫という人は文学者になり損ねたどうも胡散臭い人なのだが、詳細についてはロマン優光の『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コア新書)に譲る。


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