(「還暦の赤」プロジェクト 1081+1082編成@空港通り~仏生山間)
2018年12月に、京急ファンの有志の方によって始められた「『還暦の赤』プロジェクト」という企画。ことでんに残る旧京急1000形を、同車両のデビュー60周年に合わせて往時の京急カラーに塗り直そうという企画でした。ちなみに、「リバイバル塗装」ってのはどこの鉄道会社でもイベントやキャンペーンの一環として定番とも言える施策なんで、そう珍しいもんでもないと思うのですけど、コレに関しては鉄道会社や観光協会などではなく、資金の出どころが「ファン発信のクラウドファンディングであった」というのが徹底的に違うところですね。そんな「還暦の赤」を空港通りから仏生山へ向かう病院裏のストレートで。朝は4連で組成されていたんですけど、どっかで編成を切り落としたのか(琴平?)、単独2連で返してきました。
仏生山の駅で、築港から返してきた一宮行きに入っていたリバイバル編成に乗車(219レ)。間近で見ると、確かに色味といい質感といい、細部に亘っても旧京急1000形のカラーリングを忠実に守っていますねえ。ことでんで使われている前面のナンバー部分は白帯で塗りつぶし、京急時代にナンバーが置かれていた位置に改めて車番を書き直している辺りも芸が細かい。ちなみに、今回のクラウドファンディングは「完全なる京急時代への塗装の変更」ではなく、「京急時代の塗装を模した広告枠の買い取りによるラッピング車両」という位置づけのため、白帯部分の「ことでん」の企業ネームとコーポレートマークだけはそのままになっていると聞きました。
実は、この企画が鉄道マニア界隈で回り始めた時、個人的には企画自体に若干懐疑的な見方が強かったのです。鉄道車両の塗装に対してファンの願望があっても勿論良いとは思うのだけど、クラウドファンディングという形で資金を募って主宰者の求める塗装を実現させるというのは、ファンのエゴであって鉄道会社に対する越権行為ではないかと。ことでんで京急1000形が元気で活躍しているのなら、カラーはともかくそれはそれでいいじゃないか?というね。いわゆるマニアの押し付け、みたいなものがあまり好きな方ではないので、例えば小田急ファンの有志がお金集めるから富士急にRSEを塗り戻して!というのも、気持ちは分かるけどなんか違うかなあ・・・と思うんですよ。
車内の雰囲気、そして天井の扇風機に「KHK」のマークが残る車内。通勤で20年以上京急に乗車しているので、少し前まで当たり前のように見ていた光景です。今や京急には鋼製車が希少な存在になり始め、あっちを向いてもこっちを向いても走っているのは新1000ばかりという会社になりました。まあ私が通勤で京急を使い始めた20年前は、どこを向いてもこの旧1000形ばかりが走っていたのも京急でしたから、まさに歴史は繰り返しているのですけどね。
瓦町の駅を出て、駅ビル階下の暗がりを琴平へ急ぐ赤い電車。しかしこうしてCFが成立して、実車が走っている姿を見てしまうと、当初の企画への懐疑的な気持ちもどこへやら。「素晴らしい・・・!」という言葉しかなくて、まったくもって自分の不明を恥じ入るのみではある。たぶん自分みたいなヒネた鉄道ファンによるご意見その他、逆風も決して少なくなかったと思うんですけど、そこを乗り越えてこの企画を成立させた主宰者の皆様と、1,500万円以上の資金を集めたファンの思い。そしてそこに応えたことでん本社に賞賛の言葉しかないのであります。
どんな世界でも、傍観者は傍観者でしかなく、天は自ら助くる者を助くという事ですな。
還暦の赤、堪能させていただきました。ありがとうございました。