青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

いざ行かん こんぴらさんへ ゆるゆると

2020年02月15日 20時00分00秒 | 高松琴平電気鉄道

(ため池の畔にふわり白水仙@岡本駅)

美味しい本場の讃岐うどんで腹を満たしつつ、再び沿線に展開します。ことでんの撮影がメインとはいえ、せっかく香川まで来たのなら「こんぴらさん」こと金刀比羅宮に参拝したい。西の国は関東と比べると多少日が沈むのが遅いですけど、こんぴらさんの社務所が閉まってしまうのが午後5時らしいので、それに間に合うようにゆるゆると琴平方面に向けて撮影を進めて行きます。香川県の風景と言えば、満濃池に代表されるため池の風景。大きな川を持たず、雨の少ない瀬戸内の気候によって、水不足に悩まされやすかった讃岐の国。黄色い電車が、水仙咲く奈良須池のほとりを行く。

挿頭丘駅。フリガナが振られていないと「かざしがおか」とかなかなか読めない難読駅名。古事によると、祭礼の際に要人が装飾として頭部に花を挿すのを「花挿す(かざす)」と言ったものが、「頭(かんむり)」に「挿す」→「かんざす」→「挿頭(かざ)す」となったもので、和装の「かんざし」という言葉の語源でもあるそうな。

挿頭丘の駅はことでんでは珍しい堀割りの駅で、上を市道がまたぎ越しています。橋の上からの構図にほんのりとデジャヴ感を覚えてしまったのだが、年末に行った銚子電鉄の本銚子の駅と同じですね。電車の頭上に掛かる枝は桜の枝、さすがにまだ蕾も固く締まったままだけど、春は桜との取り合わせが絵になる駅でしょう。駅に到着した築港行きの1080形はセブンイレブン&nanacoラッピング。ちなみにnanacoを使うときは「かざすだけで簡単支払い」がウリなので、挿頭丘での撮影は素晴らしいコラボレーションの一枚と言えるのではないでしょうか(笑)。

滝宮駅。大正15年の開業当時からの駅舎がそのまま残されていて、近代化産業遺産認定を受けています。この駅の事を題材にして写真を撮られている方も多く、個人的には楽しみにしていた駅です。入口側の間口と駅舎側と、切妻構造を組み合わせた立体的な位相が素敵な駅ですが、何と言っても駅前の赤ポストね。この「ザ・郵政省」としか言いようがない郷愁を誘う赤ポストが、この駅の雰囲気を絶対的に高めています。

駅の中は待合室と改札口だけのシンプルなもの。駅員の勤務が行われているのは朝夕の時間帯のみらしいですね。おそらく出札口であったはずの場所にはきっぷの自動券売機がはめ込まれていますが、改札に簡易型のICカード機器が置かれているのでも分かる通り、ことでんでは非接触ICカード「IruCa」をが導入しています。但し、全国で使えるわけではなく、基本的にはことでん限定。逆にPASMOやSuicaのように全国区のICカードは、片乗り入れでことでんのICカードシステムを使う事が出来るようになっています。

開業時(大正時代)は、おそらくこんな洋風建築って時代の最先端だったんだろうなあ。作り込みこそ簡単にはなっているけど、当時の琴平電鉄的には東京の田園調布駅とか、それこそ大阪の諏訪ノ森駅とか、そういう雰囲気の瀟洒な駅舎でお客さんの目を引き付けようと思ったのだろう。「ハレの日」の舞台に相応しい精一杯の豪華さや一生懸命さが、この駅には詰まっていると思う。

滝宮駅は綾川町の中心部にあり、町役場や総合病院などの主要施設にも近い場所にあります。琴平行きの電車から乗客が下車して行きましたが、日中の電車の利用者は、高齢者や学生の比重が高いようですね。駅の周りには雑貨屋さんやよろず屋さんなどのいくばくかの個人商店があって、いかにも昔ながらの街道筋の町と言った雰囲気があります。しかしながら、綾川町の国道32号バイパス沿いには香川県屈指の超巨大ショッピングモールである「イオンモール綾川」がありますので、周辺の商圏における顧客の流動はほぼイオンモールに吸い上げられているものと思われます。イオンモールは徹底的にクルマ社会の商業施設ですからねえ。

現在でも平日の朝夕ラッシュ時は築港駅からこの駅までの折り返し列車が発着し、最短で15分間隔の運転になる滝宮の駅。それだけに、朝夕だけでも駅員の配置が続いているんですけど、ことでんもイオンモール綾川の利用客を見込んで2013年に築港側900m手前に新駅(綾川駅)を設置。綾川駅に駅前広場を整備し、イオンモールの最寄り駅と高松空港行きバスの結節点としての機能を持たせました。結果、綾川駅の利用者は倍増し、滝宮駅の利用客は半減する事となります。キレイで広い駅前、車での送り迎えがしやすい綾川駅に対し、滝宮駅にはレトロなポストとレトロな駅舎と小さな駅前広場が残りました。そんな愛おしいほどに昭和の私鉄な雰囲気を残す中で、自動販売機の「ことちゃん」が笑っています。

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