(走れ仲間の元へ@大町駅)
屋島を後に、八栗寺の麓を抜けて志度方面へ歩みを進めます。朝のラッシュ時には折り返しの電車も設定されている大町駅の交換風景を。駅を見渡す踏切脇の郵便局から望遠で抜いていたのですが、私の横に待ち合わせをしているらしきサッカー少年が何人か。構内踏切の遮断機が上がって、瓦町行きから降りてきた少年がこちらの方にダッシュして来ました。土曜日の練習、待ち合わせに遅れずに合流出来たかな?普段着の志度線の風景です。
大町からは志度街道(国道11号)に沿って走る志度線。タテ型丸目の前照灯が特徴の、東山線の初期型車両。高松の市街からは離れ、周辺には住宅に混じってだんだんと田園風景が増えて来ます。八栗新道から塩屋の間にかけて、街道と志度線を跨ぐ歩道橋から俯瞰すると、冬の乾いた風景の中にひときわ目立つ菜の花の黄色。住宅街の向こうには瀬戸内海が青く見えますが、ここから志度にかけてが、志度線の車窓の一番のクライマックスになります。
国道からわき道に逸れ、穏やかな志度湾の漁港を通り抜けて、海岸沿いの堤防にやって来ました。志度線は塩屋を出ると志度街道をやや離れ、志度湾に突き出た「房前(ふさざき)の鼻」という小さな岬をぐるりと回って行きます。後ろには突兀とした姿の八栗山、澄んだ瀬戸内の波打ち寄せる浜辺をすれすれに走る電車の姿は、昔々から志度線随一の景勝の地として多くの人に愛されています。過去の作例を見ると、昔は海に面したフェンスがなくてもうちょっと電車と海の見通しが良かったようですが、それでも志度線と言えばここ!というシャッターポイントであることは、昔も今も変わらないようです。
電車は海岸沿いの急カーブを、くの字に編成を折り曲げながら大きなフランジ音を立ててゆっくりゆっくりと回って行きます。波よけのフェンスがちょっと高いので、構図作りはやや難しい。なるべくフェンスを避けるようなハイアングルで、琴電志度行きの3連を電車がお天道様を正面に見たところでパチリ。スピードが遅いので、手持ちならアングルを動かしながら何カットか撮影することも可能です。青い海に青い空、瀬戸内の島々、遠く見えるは小豆島。そんなロケーションの中をピンクの小さな電車が走って行く光景。色んな人が色んな作品を撮影した名撮影地ですから、自分ごときの一枚なんぞ凡庸の極みでしかないのだろうけど、それでも「ああ、いいなあ!」と思わずひとりごちてため息の漏れる房前のひと時であります。
10分おきに上下の電車が行き交う房前界隈。風もなく暖かい冬の日差しの中、列車の通過を待っては撮影し、列車の合間は少し高い堤防の上に座って、缶コーヒーを片手に海を見ながらボケーっとしている至福の時間。ちょっと強めの磯の香りがするのに気が付いたのだが、房前の漁港の片隅にはうず高く積まれたカキの殻の山があって、そっから漂ってくるようだ。志度湾はカキの養殖も盛んで、シーズンになると漁港の近くにはカキ小屋なんかも出ているらしく。カキを食うには冬のいいシーズンでもあるし、個人的にはカキフライとかカキご飯とかすごく好きなんだけど、あいにく我が家の人たちはカキには何も興味を示さない。ので、食べたい場合は自分で食べに行くしか方法はないのである。
幸いなことに、この「房前の鼻」を見下ろす高台には、「源平の里むれ」という道の駅がある。そこのレストランでも行けばカキの何かしらは食えるだろと。前の日から讃岐うどんばっかり食べてたから、そろそろコメが食いたい。ソースたっぷりつけたカキフライでアツアツのメシをがっつくなんて最高じゃないですか。おりしも時刻は11時、デンシャを撮ってばかりでも腹が減るときは減る。少し早いけど昼飯にしよっかな。