(終着駅の前の駅@音沢)
音沢駅。電鉄富山から40番目の駅にして、次は終点・宇奈月温泉。個人的に、旅の中で掘り下げているテーマである「終着駅の一つ前」の駅。集落を貫く旧道に面して、人ひとりが立つのもやっとな細い細いホームが立っている。今日の営業は、宇奈月温泉行の列車を2本残すのみ。電鉄富山方面の終列車はもう行ってしまった。何年か前に富山県の統計では、この音沢の駅でも日に200人程度の乗降客があるとの統計が出ているのだけど、現在はいかばかりか。
21時35分、終電一本前の宇奈月温泉行きが、静かに山を登って来た。こんな時間の電車、誰も降りる人なんかいないだろう・・・なんて高をくくっていたら、運転席寄りのドアから何人かの乗客の降りる姿が。黒部の谷狭まる音沢の集落、ここから黒部や魚津の街へ仕事に通っている人々の帰宅の足として、鉄道がしっかりと役割を果たしていました。「どうせ通勤はマイカーがほとんどでしょう」なんて、見くびっていたのはこちらだったのではないかという汗顔の至り。
電鉄黒部から、黒部川の扇状地を断続的に登って行く黒部線。立山線ほどではないが、こちらも終点に向かって急勾配になっている。音沢の駅は、駅の途中から22パーミルの勾配。本来であれば駅のホームはレベル(水平)であることを良しとするところではあるのだけど、そうも言っていられないという事か。カーブの向こうに電車の灯りが消えると、また駅を暗闇と静寂が包みました。
音沢。黒部川に流れ込む小さな沢音が、止むことなく響いているような。そういう土地の情景から名付けられた集落の名前でしょう。大正11年に黒部鉄道がこの地に鉄道を建設してから、来年で100年を迎える変わらぬ鉄路の情景。たかが2年に満たないコロナ禍でどうにかなってしまうような、地元との繋がりはそんなヤワなものではないと信じたい。今回の富山行、大幅な減便ダイヤとなってからは初めての訪問となったのだけど、さすがに特急が消えた地鉄沿線には一抹の寂しさがあって・・・再び立山黒部に観光の賑わいが戻るまでには、しばらくの時間が掛かりそうです。
ま、一介のマニアが出来る事は、こうやって現地に赴き、ささやかな売り上げに貢献するくらいのほかはないのだけど。
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