(学生列車@北鉄石川線)
土曜日の午後、鶴来方面へ下って行く北鉄電車は、乗客の9割が学生という客層。新西金沢からJR乗り換え組が加わり、ほぼ座席が埋まったような状態で野々市市郊外を下って行く。野々市、馬替、額住宅前、四十万あたりの乗降が多かったですね。ワンマン運転なので、下車する乗客の運賃回収もそこそこ。学生でも定期を持ってない現金客がそれなりにいた辺り、部活の対外試合とか校外練習みたいな理由で電車を使っていた子も多かったのかな。
駅に着いて電車を降りる際、精算に時間のかかる学生さんはあんまり電車に乗り慣れてないと見えて、整理券を引いていなかったり両替をしていなかったり。現金での電車の乗り方って、正直普段から利用してないと今の若年層は分からないかもね・・・思えば自分の子供だって、電車やバスはチャージしたカードで乗るものだと思ってるし、そもそも大抵の子供がキップの買い方なんてのも分からないだろうからなあ。北鉄もバスはICカードが導入されてるんですが、「Ica(アイカ)」と呼ばれる北鉄独自のカードで、いわゆるSuicaのような全国共通のICカードとは互換性がありません。地鉄の「えこまいか」みたいなもんか。鉄道に至っては有人駅しかカードリーダーが置いてないので、ワンマン運転の途中無人駅では、結局現金精算しか方法がないのが現状。
四十万駅を出た辺りから、沿線風景は住宅街から手取川用水によって灌漑された田園地帯に変わって行き、学生の数も徐々に減って来た。田園の中の交換駅、道法寺駅。以前は白山山麓の山襞に沿って、鶴来から先も加賀一の宮から白山下方面へ金名線(きんめいせん)が伸びていたんですが、北鉄石川線の旅ももうすぐ終点。
野町から30分、終点・鶴来駅に到着。この鶴来は、かつては寺井から伸びていた能美線と、手取川の谷に沿って南の山間部に分け入り、白山下まで走っていた金名線の3線が乗り入れた交通の要衝でした。昭和の時代、特に加賀石川で権勢を奮った北陸鉄道、戦後間もない頃は鉄軌道線を合わせて150km弱の路線網を持っていたそうで、羽咋からの能登線、金沢からの金石(かないわ)線・金沢市内線、寺井からの能美(のみ)線、鶴来からの金名(きんめい)線、新小松からの小松線、大聖寺からは山中線、動橋からの山代線、粟津からの粟津線・片山津線が走ってたというのだから恐れ入る。南・北・西と三方の守りを固めていた鶴来の駅は、今でも僅かだけ白山下方面への線路が引き上げ線代わりに残っていて、まだレールが続いているように見えなくもない。そういう意味では終着駅と言う感じの薄い駅です。
木造瓦葺二階建て、北陸鉄道の社紋が燦然と輝く鶴来駅の駅舎。主幹駅らしい流石の風格です。旧鶴来町(現・白山市)の中核駅で、駅前には役場もあります。が、行政の中心点が賑わっているとは必ずしも言えないようで、駅から少し南に離れた金劔宮(きんけんぐう)の周辺に開けた門前町が、鶴来の街としての中心部になるようです。おそらく、この金劔宮の「劔」の部分が「鶴来」の由来なのでしょうね。なかなか時間がなくて街の方まで行ってらんなかったんだけど、めったに来ない町なんだからお社さんくらいにはお参りしても良かったか・・・なんて今更ながら思う。暑いのと腹減ってたので、町まで歩く気力がなかった(笑)。
土曜の午後、静かな鶴来駅前。金名線の廃線跡を辿って、北鉄バスが1日4往復だけ白山下方面へ接続しています。そもそもこの金名線という路線の由来ですが、「金沢と名古屋を結ぶ」という壮大な計画の下に名付けられたんですよねえ。その当時の北陸鉄道がどんだけ鼻息荒かったんだよ!という栄華の時代を偲ぶエピソードの一つにもなっておりますが、実際、両白山地の大山塊を抜けて鉄路を敷設するとして、どういったルートを取ったのだろう?という壮大な未成線計画の夢。今の白山スーパー林道の下あたりを長大トンネルで抜けて白川郷に出て、御母衣湖の湖畔を抜けてひるがの高原から現在の長良川鉄道に接続していたのだろうか。現在は北鉄高速バスが北陸道経由で金沢と名古屋を約3時間半で結んでいますが、東海北陸道回りじゃないのね。
世が世なら、名古屋と金沢を結ぶ大動脈の中間駅となっていたかもしれない鶴来の駅。改札脇に置かれた申し訳程度の展示物が、この駅が手取川流域の交通の要衝だった事を物語っています。急行とか準急の設定もあったんですよね。北鉄。日中のスピードアップを目的に、乗降客の少ない駅をスキップして走るのが準急だったようですが、停車駅が一定しないのと、あんまり速達効果がなかったという事でひっそりと廃止されてしまったそうな。全盛期の150km弱から、今や石川線・浅野川線を全線合わせても20km少々となってしまった北陸鉄道。全盛期なら山中と金沢で2泊くらいしないと乗り切れないくらいの路線があったんだろうけど、今は朝から半日程度でまったりと完乗出来てしまう事が、寂しくもあり。
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