(冬の西日を浴びて@下今市機関区)
鬼怒川温泉からSLを追い掛けて下今市駅へ。SL運行に伴って整備された転車台にて折り返しに備えての転回作業を鑑賞します。SLに乗ってきたお客さんが、SLを降りてからでも十分に観覧出来る時間の余裕とスペースを確保して運行されている「SL大樹」。運行距離は短いですが、その分生のSLの息遣いに接していられる時間はそこそこあります。こういう転車台って今はどこのメーカーも新造の発注なんか受けてないからどっかから持って来るケースがほとんどなんだけど、ここ下今市の転車台は山陰本線の長門市駅にあったものを移築したんだそうな。
レンガ造りの「下今市機関区」へ入庫するC11。北関東の物流ネットワークを支えていた東武鉄道は、葛生からの砕石やセメント、北舘林へのガソリン輸送や粉体輸送など多くの貨物取扱を抱え、海外輸入の蒸気機関車や電気機関車の保守整備のために大手私鉄では珍しく「機関区」を持っていた会社でもありました。貨物輸送の終焉から14年、東武鉄道に新しい形で「機関区」が復活したことになります。
補機であるDE10も機回し。元々が貨物用の入換機なんでどっちエンドでも様になるのがDE10ですが、律儀に列車毎にエンドを揃えていますね。この転車台は、長門市駅が「正明市駅」と名乗っていた頃のもので、20数両の機関車が収納出来る扇形機関庫とセットで設置されていたようです。本州で最後までSLの運転が残ったのが山陰本線の下関~長門市間だったそうで、そういう意味でも文化財的な価値はありそうです。
転車台の見学ゾーンに併設されているのがSL展示館。正直中の展示物にそんな大したものがある訳ではありませんが、SLを中心に再度日光・鬼怒川の周遊ツーリズムを仕掛け直したいと考えている東武鉄道の意気込みは感じられます。個人的には東武鉄道って影響力の強い根津財閥の考え方なのか基本的に文化事業には理解が高いイメージがある。東武博物館とかも私鉄が運営する博物館としては全国でNo.1の規模と内容だと思うしなあ。
転回を終え、機回し線をギリギリまで走って行くC11。日が暮れてスチームの湯気が暖かく見えて来ました。我々もそろそろ帰らなければなりません。二日間に亘った子供と鬼怒川と南会津の旅、そろそろフィナーレの列車が到着する時間です。
帰りは東武100系スペーシアを使用した「特急きぬ138号」。リバティが投入されているので見過ごされがちですが、既に就役から25年を数える大ベテラン車両。個室サロがあったり、一般席でもフットレスト付きなどベースがバブル仕様で基本グレードが高いのは特筆されますが、さすがに細部に亘ってはかなりの老朽化が伺えます。ってか経年のせいか化粧板とか結構汚くなっちゃってるんだよね。そろそろ後継の特急車両を考えても良さそうに思うけど、あくまでビジネスユースのリバティの増備でスペーシアを置き換えるのは愚策でしょうね。VSEの置き換えでMSEを増備するようなものだ。
夕闇迫る関東平野をスペーシアがぶっ飛ばしていく。相変わらず壮大な大河・利根川の夕景色である。6050系の急行、SL撮影、AIZUマウントエクスプレス、特急リバティ、そしてスペーシア。一応東武・野岩・会津の三社を股にかけて抑えるべき列車は全て抑えたと思う。内容充実のいい旅であった。
車内販売のアイスコーヒーで子供と乾杯。ちなみに春日部までの特急券なのは別に特急料金をケチったわけではなくて、スタンプを押したら貰える電車のカードの引き換え場所が春日部だからなんだよね。引き換え場所だった春日部駅の定期券売り場にいた東武の社員さんに「10社制覇本当にお疲れさまでした!」とねぎらいの言葉をいただいたのだが、「鬼怒川温泉はキツイ!」と思わず本音ともクレームとも付かない感想を述べてお互い苦笑い。おかげで帰りは東急8500の急行中央林間行きで神奈川県央方面までの2時間コースの刑になってしまったが、まあ春日部から家の近所まで一本で行けるのはありがたいと言えばありがたい。
家に帰ったらヨメさんから「ここまでやったんだから、もう来年は(スタンプラリー)止めてよね!?」というキツイ忠告を受けたんだが、果たして守れるのだろうか。こんな旅の楽しさを知ったら余計に味を占めてしまうのではあるまいか。「そんなこたあ来年にならないと分からないよ」と軽く答えて、旅の締めにすることといたしましょう(笑)。